「遺伝子検査を受けたいけど、費用は公的医療保険の対象になる?」「もし検査で将来の病気のリスクがわかったら、生命保険や医療保険に入れなくなるのでは?」といった不安や疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、遺伝子検査と保険に関するお金の心配事をすべて解決します。
まず結論として、遺伝子検査の結果を理由に生命保険などの民間保険に加入できなくなることはありません。現在の業界ルールでは、検査結果は加入時の告知義務の対象外とされているためです。
一方で、公的医療保険が適用されるのは、がんゲノム医療など一部の遺伝子検査に限られます。
遺伝子検査とは 目的別にわかる2つの種類
近年、技術の進歩により遺伝子検査が身近なものとなり、健康管理や疾患の予防、あるいは自分自身の体質を知るために関心を持つ方が増えています。
遺伝子検査は、その目的によって大きく2つの種類に分けられます。
それぞれの特徴を理解することが、保険との関係を考える上で重要になります。
医療機関で受ける診断や治療のための遺伝子検査
医療機関で受ける遺伝子検査は、医師が病気の診断を確定したり、治療方針を決定したりするために行う「医療行為」です。
検査の実施や結果の説明は、医師や専門のカウンセラーによって慎重に行われます。
この検査は、診断や治療に直結するため、検査の質や結果の信頼性が高く、特定の条件を満たせば公的医療保険が適用される場合があります。
具体的には、がんゲノム医療における「がん遺伝子パネル検査」や、遺伝性疾患が強く疑われる場合の確定診断などが挙げられます。
自宅で手軽にできる市販のDTC遺伝子検査
DTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査とは、医療機関を介さず、消費者がインターネットなどで直接購入できる検査キットのことです。
自宅で唾液などを採取して郵送するだけで、病気のかかりやすさ(リスク)や体質、祖先のルーツなどを知ることができます。
検査結果は病気の「診断」ではなく、統計的なデータに基づく傾向を示すものであり、医療行為にはあたりません。
そのため、費用はすべて自費となり、公的医療保険の対象外です。
| 項目 | 医療機関の遺伝子検査 | DTC遺伝子検査 |
|---|---|---|
| 目的 | 病気の確定診断、治療方針の決定など | 疾患リスクや体質の傾向把握、健康増進など |
| 実施場所 | 病院・クリニックなどの医療機関 | 自宅 |
| 費用 | 保険適用(一部)または自費 | 全額自費 |
| 結果の性質 | 医師による確定的な診断 | 疾患リスクや体質の統計的な傾向 |
| 専門家の関与 | あり(医師、遺伝カウンセラーなど) | 基本的にはなし |
遺伝子検査は公的医療保険が使える?保険適用の条件を解説
保険が使えるかどうかは、その検査が病気の診断や治療方針の決定に必要不可ctableな医療行為であるかどうかが重要なポイントです。
この章では、遺伝子検査における保険適用の条件について、具体的なケースを交えながら詳しく解説します。
遺伝子検査で保険適用となるケース
遺伝子検査が保険適用となるのは、医師が患者の病気の診断や治療法の選択に不可欠であると判断した場合です。
代表的な例として「がんゲノム医療」と「遺伝性疾患の確定診断」が挙げられます。
がんゲノム医療における遺伝子パネル検査
がんゲノム医療では、「がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)」と呼ばれる検査が行われます。
これは、がん組織などを用いて一度に100種類以上のがん関連遺伝子を調べ、個々のがんの特性に合った治療薬を探すための検査です。
この検査は、2019年6月から公的医療保険の適用対象となりました。
ただし、誰でも受けられるわけではなく、保険適用には以下の条件を満たす必要があります。
- 標準治療がない、または標準治療が終了した(あるいは終了が見込まれる)固形がんの患者さん
- 全身の状態が良好で、検査後に化学療法(抗がん剤治療)の適応となる可能性が高いと主治医が判断した方
- 国が指定する「がんゲノム医療中核拠点病院」や「がんゲノム医療連携病院」などで受けること
検査費用は56万円ですが、保険が適用されるため自己負担額は1割〜3割となります。
さらに、高額療養費制度を利用することで、自己負担額をさらに抑えることが可能です。
保険適用となる代表的ながん遺伝子パネル検査には、「OncoGuide™ NCCオンコパネル システム」や「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル」などがあります。
遺伝性疾患の確定診断
特定の遺伝性疾患が強く疑われ、その確定診断を目的とする場合にも、遺伝子検査に保険が適用されることがあります。
診断を確定することが、その後の治療方針の決定や患者さん・ご家族の健康管理に直接的に繋がるためです。
保険適用となる主な遺伝性疾患には、以下のようなものがあります。
| 疾患カテゴリ | 代表的な疾患名 |
|---|---|
| 遺伝性腫瘍 | 遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)、リンチ症候群など |
| 神経・筋疾患 | デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、ハンチントン病など |
| 循環器疾患 | マルファン症候群、先天性QT延長症候群など |
| 代謝異常症 | フェニルケトン尿症、ファブリ病、ゴーシェ病など |
これらの検査を受けるためには、まず専門の診療科を受診し、医師による診察や遺伝カウンセリングを受けることが一般的です。
遺伝子検査が保険適用外(自費)になるケース
一方で、医師による診断や治療を直接の目的としない遺伝子検査は、公的医療保険の適用外となり、費用は全額自己負担となります。
- 個人の興味や健康増進目的の検査
インターネットなどで販売されている市販のDTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査キットのように、体質(肥満、肌質など)や疾患のリスクを知るための検査は医療行為と見なされず、保険は適用されません。 - 発症前のリスク診断
現時点で症状はないものの、将来の病気の発症リスクを調べるためだけの予防的な遺伝子検査は、原則として保険適用外です。 - 標準治療開始前のがん遺伝子パネル検査
一部の医療機関では、保険適用の条件を満たさない段階(例:標準治療開始前)でも、自費診療としてがん遺伝子パネル検査を提供している場合があります。
遺伝子検査や保険適用に関する疑問や不安がある場合は、まずはかかりつけの医師や、専門の遺伝カウンセリング外来、またはがん相談支援センターなどに相談することが大切です。
ご自身の状況に合わせて最適な選択をするために、専門家からの正確な情報を得ましょう。
遺伝子検査の結果で民間保険に入れないは本当か
しかし、結論から言うと、現在の日本のルールでは、遺伝子検査の結果のみを理由に保険加入を断られることは基本的にありません。
この章では、保険加入時の告知義務の基本から、なぜ遺伝子検査の結果が告知の対象外なのか、その根拠となる業界の自主ルールまでを詳しく解説します。
生命保険や医療保険の加入時に必要な告知義務とは
生命保険や医療保険に加入する際、契約者や被保険者は、保険会社からの質問に対し、現在の健康状態や過去の病歴などをありのままに報告する「告知義務」があります。
これは、保険契約者間の公平性を保つために非常に重要なルールです。
告知書で質問される主な内容は以下の通りです。
- 最近3か月以内の医師による診察・検査・治療・投薬の有無
- 過去5年以内の特定の病気による入院・手術の有無
- 過去2年以内の健康診断や人間ドックでの異常の指摘
- 身体の障害の有無
これらの質問に、正確に回答する必要があります。
現在のルールでは遺伝子検査の結果は告知義務の対象外
現在の生命保険業界の取り扱いでは、遺伝子検査の結果は、原則として告知義務の対象とはなりません。
ただし、注意が必要な点があります。遺伝子検査がきっかけであっても、すでに特定の病気を発症していると医師から診断された場合は、その「病名」や「診断の事実」を告知する必要があります。
あくまで告知が不要なのは「未発症のリスク情報」である遺伝子検査の結果そのものであり、医師による「診断」とは区別される点を理解しておくことが重要です。
なぜ告知義務が不要なのか 業界の自主ルールを解説
遺伝子検査の結果が告知義務の対象外である背景には、生命保険業界全体で定められた自主的なルールがあります。
この自主ルールは、生命保険協会のウェブサイトでも公開されており、その主なポイントは以下の通りです。
| 項目 | 生命保険協会の自主ルール |
|---|---|
| 遺伝子検査結果の収集 | 保険会社は、保険の引受・支払実務において、遺伝子検査の結果を収集・利用しません。 |
| 加入者からの告知 | 契約者や被保険者は、遺伝子検査の結果を告知する必要はありません。たとえ告知書などに記載があった場合でも、その情報は利用されません。 |
| 他の情報からの特定 | 診断書や家族歴などから遺伝子検査結果と同等の情報が推測できる場合でも、その情報を利用することはありません。 |
このように、業界全体で遺伝情報を保険の審査に利用しないという明確な方針が定められているため、遺伝子検査を受けたこと自体が保険加入の妨げになることはありません。
遺伝子検査を受ける前に知っておきたい保険のポイント
遺伝子検査と保険の関係について理解が深まったところで、実際に検査を受ける前に知っておくべき、より具体的な注意点やポイントを解説します。
将来の安心のために、検査前後の正しい知識を身につけておきましょう。
検査の前に保険の見直しや新規加入を検討する理由
現在のルールでは、遺伝子検査の結果は生命保険や医療保険の告知義務の対象外です。
しかし、このルールが将来にわたって不変である保証はありません。
また、もし検査によって将来の疾患リスクが高いことが判明した場合、精神的な不安から「やはり保険で備えておきたい」と考える可能性があります。
特に、がんや特定の遺伝性疾患に備える「がん保険」や「特定疾病保障保険」などは、検査前に検討しておくとより安心です。
ご自身の状況に合った保険がわからない場合は、専門家への相談も有効な手段です。
もし検査結果が陽性だったら保険加入はどうなる?
「もし遺伝子検査の結果が陽性だったら、保険に入れなくなるのでは?」と心配される方は少なくありません。
結論から言うと、遺伝子検査で特定疾患のリスクが高いという「検査結果」が出ただけでは、それを理由に保険の加入を断られることはありません。
ただし、注意すべきは、その検査結果を受けて医師の診察を受け、正式な「診断」が下された場合です。
例えば、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のリスクが高いという検査結果が出た後、医師からHBOCであると「診断」された場合、その診断名は告知義務の対象となります。
告知義務の対象となるかならないかの違いを正しく理解しておくことが重要です。
| 項目 | 告知義務の要否 | 具体例 |
|---|---|---|
| 遺伝子検査の結果 | 不要 | 「BRCA1遺伝子に変異が見つかり、遺伝性乳がん卵巣がん症候群のリスクが高い」という検査レポートの結果そのもの。 |
| 医師による診断 | 必要 | 検査結果に基づき、医師から「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と診断された場合。その診断名や、予防切除などの治療歴。 |
このように、あくまで「医師の診断」が告知の対象となります。
このルールは、生命保険協会が定める業界の自主的なガイドラインに基づいています。
詳しくは、一般社団法人生命保険協会のウェブサイトでも確認できます。
NIPT(新型出生前診断)と保険の関係性
NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)は、お母さんの血液を採取して、胎児の染色体異常のリスクを調べる検査です。
このNIPTも遺伝子検査の一種ですが、保険との関係性でいくつか知っておくべき点があります。
まず、NIPTは病気の治療を目的とした検査ではないため、公的医療保険の適用外となり、費用は全額自己負担となります。
また、生命保険や医療保険においても、NIPTを受けたことや、その結果(陽性の可能性など)は、現在のところ告知義務の対象外です。
しかし、NIPTで陽性の可能性が示された後、羊水検査などの確定診断を受けて、染色体異常などの「診断」が確定した場合は、その診断名は告知義務の対象となる可能性があります。
NIPTと保険の関係で不安な点があれば、一人で悩まず、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。
遺伝子検査と保険の不安は専門家への相談が解決の近道
遺伝子検査を受けるにあたり、保険に関する疑問や将来への不安を感じるのは自然なことです。
専門家は、中立的な立場からあなたの状況や価値観に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えてくれます。
インターネット上の情報だけでは得られない、個別の状況に合わせた具体的なアドバイスを受けることで、安心して次のステップに進むことができるでしょう。
相談できる専門家の種類とそれぞれの特徴
遺伝子検査と保険に関する相談先は一つではありません。
それぞれの専門家が持つ知識や得意分野が異なるため、ご自身の相談したい内容に合わせて適切な専門家を選ぶことが重要です。
| 専門家の種類 | 主な相談内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 遺伝カウンセラー | 遺伝に関する医学的な情報、検査の意義や限界、結果の解釈、心理的・社会的な影響など | 遺伝医療の専門家。医療機関に在籍していることが多く、検査を受けるべきかどうかの段階から相談できる。 |
| ファイナンシャルプランナー(FP) | 現在の保険の見直し、新規保険の検討、将来のライフプランに基づいた資金計画、家計相談全般 | お金と暮らしの専門家。複数の保険会社の商品を比較検討し、中立的な立場で最適なプランを提案してくれる。 |
| 保険会社・保険代理店の担当者 | 特定保険商品の詳細な内容、加入条件、保険料の見積もりなど | 自社商品に関する深い知識を持つ。特定の商品について詳しく知りたい場合に適している。 |
専門家に相談する前に準備しておきたいこと
相談時間を有効に活用し、的確なアドバイスをもらうためには、事前にご自身の状況や考えを整理しておくことが大切です。
- 現在加入している保険証券(種類、保障内容、保険期間、保険料など)
- 検討している、あるいは受けた遺伝子検査の種類と目的
- ご自身の健康状態や家族の病歴(わかる範囲で)
- 将来のライフプラン(結婚、出産、住宅購入など)やお金に関する希望
- 特に不安に感じていることや、質問したいことのリスト
自分に合った専門家を見つけるには
どの専門家に相談すれば良いか迷った場合は、まずは幅広い視点からアドバイスをくれるファイナンシャルプランナー(FP)への相談をおすすめします。
FPは、遺伝子検査の結果が直接的に影響しない現在の保険のルールを踏まえつつ、将来のライフプラン全体を見据えた最適な備えを提案してくれます。
当社の無料相談では、経験豊富なFPがお客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、遺伝子検査に関する保険の不安や疑問にお答えします。
無理な勧誘は一切ございませんので、まずはお気軽にご自身の状況をお聞かせください。

まとめ
本記事では、遺伝子検査と公的医療保険・民間保険の関係性について詳しく解説しました。
遺伝子検査を受ける際の保険に関する不安を解消するため、重要なポイントを以下にまとめます。
まず、公的医療保険が適用される遺伝子検査は、医師が病気の診断や治療方針の決定に必要と判断した場合に限られます。
具体的には、がんゲノム医療における「遺伝子パネル検査」や、特定の遺伝性疾患の確定診断などが該当します。
個人の興味や予防目的で受ける市販のDTC遺伝子検査は、保険適用外の自費診療となります。
次に、民間保険(生命保険・医療保険)の加入において、「遺伝子検査の結果を伝えると保険に入れなくなる」というのは現在のルールでは誤解です。
生命保険業界の自主ルールにより、遺伝子検査の結果は告知義務の対象外とされています。
したがって、検査結果が陽性であっても、それを理由に加入を断られたり、不利な条件を提示されたりすることはありません。
ただし、遺伝子検査をきっかけに医師から精密検査を勧められたり、治療を開始したりした場合は、その事実が告知義務の対象となる可能性があります。
そのため、将来の疾病リスクに備えたいのであれば、遺伝子検査を受ける前に保険の見直しや新規加入を検討しておくことが賢明な選択と言えるでしょう。
遺伝子検査と保険のルールは複雑であり、個々の状況によって最適な対応は異なります。
もし少しでも不安や疑問があれば、ファイナンシャルプランナーや保険の専門家、あるいは遺伝カウンセリングなどで相談し、正しい知識を得た上で判断することが重要です。




