【胃がん手術の全て】種類・費用・入院期間から術後の食事まで徹底解説

胃がん 手術

本記事では、胃がん手術の基本、ESD/EMRなどの内視鏡、開腹・腹腔鏡・ロボット支援、幽門側胃切除・胃全摘の違い、入院期間・費用と高額療養費制度、合併症やダンピング症候群、術後の食事・仕事復帰、通院や患者会(CancerFP含む)までを網羅。

結論は、ステージに応じた術式選択と術後の生活管理がQOLを左右し、費用負担は公的制度で軽減可能です。

入院から退院までの流れもわかります。

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目次

胃がんの手術とは

胃がんの手術は、がんを体から取り除き長期生存や治癒を目指す「根治治療」の中核であり、同時に出血・閉塞(通過障害)などの症状を和らげる「緩和治療」として選択されることもあります。

治療方針は、内視鏡治療(ESD/EMR)、外科的胃切除(幽門側胃切除術・胃全摘術・噴門側胃切除術)とリンパ節郭清、そして化学療法・放射線治療などを組み合わせた集学的治療として、病期(ステージ)と全身状態、栄養状態、併存疾患、患者さんの価値観を踏まえて個別化されます。

標準治療は、日本胃癌学会のガイドラインや国立がん研究センターの情報に準拠して各施設のカンファレンスで決定されます(参考: 国立がん研究センター がん情報サービス日本胃癌学会)。

胃がん治療における手術の位置づけ

手術は「局所療法」であり、腫瘍本体と領域リンパ節を取り除くことで、病巣を完全に切除(R0切除)することを狙います。

早期胃がんでは内視鏡的切除(ESD/EMR)が第一選択となることがあり、進行胃がんでは胃切除+リンパ節郭清(D1/D1+/D2)が標準となります。

遠隔転移がある場合(ステージIV)は全身療法が基本ですが、出血・穿孔・通過障害などの症状緩和目的で手術や内視鏡的処置が行われることがあります。

手術アプローチには、開腹手術のほか、腹腔鏡下手術やロボット支援下手術などの低侵襲手術があり、適応・安全性・根治性の観点から症例に応じて選択されます。

術式後は再建(Billroth-I、Billroth-II、Roux-en-Y など)を行い、消化機能の温存と合併症リスクのバランスを取ります。

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治療法主な対象主な目的特徴・留意点参考情報
内視鏡治療
(ESD/EMR)
粘膜内など、リンパ節転移リスクが極めて低い早期胃がん根治
(病変の一括切除・病理評価)
臓器温存・低侵襲。適応は厳格で、病理結果により追加手術が必要なことがある。がん情報サービス
胃切除+リンパ節郭清
(開腹/腹腔鏡/ロボット)
内視鏡適応外の早期〜局所進行(遠隔転移なし)根治
(R0切除、系統的リンパ節郭清)
郭清範囲はD1/D1+/D2を腫瘍部位・深達度で選択。再建法を併用し機能温存を図る。日本胃癌学会
緩和手術・内視鏡的減圧出血・穿孔・通過障害などの重篤症状を伴う進行/再発症状緩和・QOL改善胃空腸バイパスなど。全身療法と並行し患者負担を最小化。がん情報サービス

同じ「手術」といっても、内視鏡治療と外科切除では目的・適応・侵襲性が異なり、治療後の生活への影響も大きく変わります。

画像診断(造影CT、内視鏡、必要に応じてEUSなど)と病理診断を総合し、消化器内科・消化器外科・腫瘍内科・放射線診断科・麻酔科・栄養サポートチームによる多職種での意思決定が推奨されます(国立がん研究センター がん情報サービス)。

手術の目的と適応となるステージ

手術の第一の目的は、腫瘍の完全切除(R0:肉眼的・顕微鏡的にがんが残らない状態)と、適切な領域リンパ節郭清による根治性の確保です。

加えて、出血コントロールや通過障害の解除など症状軽減も重要な目的となり得ます。

適応はUICC(TNM)に基づく臨床病期(cStage)や患者さんの全身状態(PS)、栄養指標、併存疾患などを総合して決まります。

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臨床病期(目安)手術適応の考え方具体例(術式・補足)根拠・参考
Stage I
(早期)
内視鏡治療適応基準を満たせばESD/EMRを第一選択。適応外なら胃切除+郭清。幽門側胃切除術や噴門側胃切除術など。再建法は病変部位で選択。がん情報サービス
Stage II–III
(局所進行)
遠隔転移がなければ胃切除+D2郭清が標準。周術期化学療法の併用が検討される。胃全摘術/幽門側胃切除術+D2。施設・症例により腹腔鏡/ロボットが選択されることあり。日本胃癌学会
Stage IV
(遠隔転移あり)
全身療法が基本。出血・閉塞などの症状が強い場合に限り緩和手術を考慮。胃空腸バイパス、止血目的の処置など。根治切除は原則適応外。がん情報サービス

内視鏡治療の適応は、病変の大きさ・部位・組織型(分化/未分化)・潰瘍の有無・深達度など厳密な基準で定められています。

病理結果で非治癒切除と判定された場合は追加の胃切除+リンパ節郭清が推奨されます。

一方、外科的切除では腫瘍の局在と患者さんの栄養・嚥下機能を考慮して、幽門側胃切除術・噴門側胃切除術・胃全摘術のいずれかを選び、再建法(Billroth-I/II、Roux-en-Yなど)で術後のQOLを最適化します。

「このステージなら必ずこの治療」という画一的な決め方ではなく、根治性・安全性・機能温存・術後の生活(食事量、体重変化、逆流対策)を総合評価し、患者さんと目標を共有して納得のいく治療計画を作ることが最重要です。

標準治療の枠組みは公的に整理されていますので、不安や疑問がある場合は主治医にガイドラインの位置づけや代替案について確認し、第3者の情報源(国立がん研究センター がん情報サービス日本胃癌学会)も参考にしましょう。

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手術の種類と特徴

胃がんの手術選択は「ステージ(深達度・リンパ節転移の有無)」と「腫瘍の場所・大きさ・組織型」によって最適解が異なり、根治性と機能温存(食事のしやすさ・生活の質)のバランスを取ることが最重要です。

早期(主にステージ0~I)では内視鏡治療が選択可能な場合があり、進行(主にステージII~III)ではリンパ節郭清を伴う外科手術が基本です。

ステージIVでは全身治療が原則で、通過障害や出血の緩和、あるいは奏効後の限られた症例での「コンバージョン手術」が検討されます。

治療方針の大枠は日本の標準治療に沿っており、詳細は国立がん研究センター「がん情報サービス」に整理されています(胃がんの治療(がん情報サービス))。

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臨床ステージの目安主な一次治療選択ポイント
ステージ0~I
(早期胃がん)
内視鏡治療(ESD/EMR)または外科手術(腹腔鏡/開腹)リンパ節転移リスクが極めて低い病変は内視鏡治療。内視鏡適応外は胃切除+適切なリンパ節郭清。
ステージII~III
(進行胃がん)
外科手術(胃切除+D2リンパ節郭清)根治切除が基本。アプローチは施設・症例により開腹/腹腔鏡/ロボットを選択。
ステージIV薬物療法が原則(必要に応じて緩和手術やバイパス)出血・狭窄の緩和、奏効例でのコンバージョン手術が個別に検討される。

以下では、ステージ別の代表的な手術技術と特徴を、適応・長所短所・想定される合併症の観点から解説します。

早期胃がんの内視鏡手術

内視鏡治療は、胃を温存しつつがん病変のみを切除する低侵襲治療です。

適応は、リンパ節転移の可能性が極めて低いと見積もられる早期胃がんに限られ、深達度(主に粘膜内)、病変サイズ、潰瘍の有無、組織型(分化型・未分化型)などの条件を総合的に満たす必要があります。

最終適応は、高解像度内視鏡・超音波内視鏡などの術前評価と、専門施設の経験を踏まえて決定されます(がん情報サービス:胃がんの治療)。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

ESDは、病変の周囲をマーキングし、粘膜下層に局注したのち、専用ナイフで粘膜下層を丁寧に剥離して一括切除(en bloc)を目指す手技です。

EMRと比べて大きな病変でも一括切除が可能で、病理学的に断端評価(垂直・水平断端)を正確に行いやすい点が利点です。

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主な適応の考え方メリット留意すべきリスク
粘膜内にとどまる、潰瘍の有無・組織型・サイズを含め
ガイドライン適応内と判断された病変
胃温存
・低侵襲
・病理評価の正確性(en bloc)
・機能温存によるQOL維持
出血・穿孔・狭窄のリスク。
病理で非治癒切除(断端陽性や予想外の深達度)となった場合は追加外科切除が必要。

ESDは手技の難易度が高いため、経験豊富な医療機関での施行が推奨されます(がん情報サービス:胃がんの治療)。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

EMRは、スネアを用いて病変を切除する方法です。

技術的に容易で短時間で行える一方、一括切除が困難なサイズでは病理評価が不十分になりうるため、現在は小病変に適応が限られる傾向があります。

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主な適応の考え方メリット留意すべきリスク
サイズが小さく、一括切除が見込める粘膜内病変手技が比較的簡便・短時間・低侵襲分割切除になると断端評価が困難。
非治癒切除の場合は追加治療(ESDまたは外科手術)が必要。

内視鏡治療後は、病理結果に基づき「治癒切除」かを判定し、追加切除や定期的な内視鏡フォローアップの要否を決定します(がん情報サービス:胃がんの治療)。

進行胃がんの外科手術

ステージII~IIIの進行胃がんでは、腫瘍の部位・大きさと浸潤範囲に応じた胃切除(幽門側・全摘・噴門側)に、適切な範囲のリンパ節郭清(一般にD2が標準)が基本です。

手術アプローチは、開腹・腹腔鏡・ロボット支援のいずれも行われていますが、症例や施設の経験によって最適解が異なります(がん情報サービス:胃がんの治療)。

開腹手術

腹部を切開して直視下に手術を行う最も伝統的な方法です。

広い視野と触診による情報が得られるため、癒着が強い症例や高度進行例を含む幅広い状況に対応できます。

一方で創が大きく、侵襲度や術後痛が比較的高くなることがあります。

  • 利点:視野の自由度・触診・複雑症例への対応力
  • 留意点:創部痛・回復までの時間・創感染など

腹腔鏡下手術

小さな切開創からカメラと鉗子を挿入して行う低侵襲手術です。

出血量や術後痛の軽減、回復の早さが期待され、早期胃がんに対して広く行われています。

進行胃がんでも施設基準や症例選択のもとで実施されます。

  • 利点
    低侵襲・整容性・回復の早さ
  • 留意点
    器械特有の操作性、学習曲線、症例選択の重要性

腹腔鏡の適応や成績については標準治療の枠組み内で検討され、施設の経験・安全性確保が前提となります(がん情報サービス:胃がんの治療)。

ロボット支援下手術

多関節ロボットアームと立体拡大視野を活用する低侵襲手術です。

手ぶれ補正や精緻な操作性により、難度の高い郭清や縫合での安定性が期待されます。

適応・安全性は施設の体制と術者の経験に依存するため、ロボット手術の導入・実績が整った医療機関での施行が前提です。

  • 利点
    精密操作・安定した視野・低侵襲性の維持
  • 留意点
    設備・熟練度への依存、症例選択、コスト

ロボット支援下胃切除の概要は国立がん研究センターの解説にも記載があります(国立がん研究センター:ロボット支援手術)。

切除範囲で見る胃がん手術の方法

切除範囲は「腫瘍の局在(胃のどの部位か)」「根治性に必要な安全マージン」「術後の機能温存」の3点で決まります。

選択にあたっては、同時に「郭清範囲(D1/D1+/D2)」と「再建法(Billroth I/II、Roux-en-Y、食道胃吻合、空腸間置・ダブルトラクトなど)」も総合的に検討します(がん情報サービス:胃がんの治療)。

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手術術式主な適応/腫瘍の位置標準的な郭清範囲の考え方再建法の例特徴・留意点
幽門側胃切除術胃の下部~中部(幽門側)に限局早期ならD1/D1+
進行ならD2が基本
Billroth I(胃十二指腸吻合)
Billroth II
Roux-en-Y
胃の一部を温存でき食事量の維持が期待。胆汁逆流やダンピング対策として再建法選択が重要。
胃全摘術胃全体に及ぶ・多発・上中部を跨ぐ・マージン確保が困難進行例ではD2が基本Roux-en-Y再建再発抑制のため根治性を優先する術式。術後は食事量が減り体重減少や貧血など栄養管理が重要。
噴門側胃切除術胃の上部(噴門側)に限局し、下部温存が可能病変の局在・進行度に応じてD1+/D2食道胃吻合
空腸間置
ダブルトラクト
胃の一部を温存して機能維持を図るが、逆流性食道炎対策として再建法や術後の食事指導が重要。

どの切除範囲でも、根治性を確保するための切除断端陰性(R0切除)と、適切なリンパ節郭清が最優先です。

そのうえで、術後QOLを高める再建法の選択・栄養介入・リハビリを組み合わせます(がん情報サービス:胃がんの治療)。

最終的な術式・アプローチは、画像診断(内視鏡・造影CT・超音波内視鏡など)と全身状態、施設の経験を踏まえ、多職種(外科・内視鏡・腫瘍内科・麻酔科・栄養)のカンファレンスで個別化されます。

疑問点や希望(胃を残したい、復職時期、逆流対策など)は、事前に主治医へ具体的に相談しましょう。

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手術の流れ 入院から退院まで

手術が決まってから入院までの準備

胃がんの診断・病期(ステージ)評価が整い、手術適応があると判断されると、手術日時と入院日が決まります。

多くの医療機関では外科、麻酔科、看護、栄養、リハビリ、薬剤部が連携するクリニカルパス(周術期標準計画)に沿って進行します。

詳細は公的情報が整理されたがん情報サービス(胃がんの治療)も参考になります。

術前には、全身状態と手術リスクを評価するために、血液・尿検査、心電図、胸部X線、呼吸機能検査、造影CTなどが行われ、必要に応じて内視鏡再評価や心臓・呼吸器の専門診療が追加されます。

これらの検査は「安全に全身麻酔を受けられるか」「出血や感染のリスクは許容範囲か」を見極める目的で実施されます(検査内容は病状によって異なります)。

現在服用している薬(特に抗凝固薬・抗血小板薬、糖尿病薬、ステロイド、サプリメント)は必ず申告し、休薬や代替の指示を受けます。

ワルファリンやDOAC、アスピリン等は手術の出血リスクと血栓リスクのバランスをとって調整されます。

周術期の合併症を減らすための介入として、禁煙・禁酒、口腔ケア(歯周病治療や義歯調整を含む)、栄養評価と食事指導、軽い運動を組み合わせたプレハビリテーションが推奨されます。

特に禁煙は肺合併症の予防に有効で、術前からの介入が術後回復を後押しします

治療法、切除範囲、手術の方法(腹腔鏡・開腹・ロボット支援)と想定合併症、輸血の可能性、術後の痛み対策や栄養・生活上の注意について、医師からインフォームド・コンセントが行われ、同意書を取り交わします。

手術の一般的な流れや合併症の解説はがん情報サービスも参照できます。

入院前の事務手続き(保険証類の確認、入院同意、必要書類の提出)や、持ち物(内服薬リスト、義歯・眼鏡ケース、履きやすい靴、前開きの衣類など)、絶飲食の開始時刻・整腸やシャワーなどの前処置は、病院の指示に従います。

家族の付き添い・連絡体制もあらかじめ決めておくと安心です。

入院から手術当日までの流れ

入院日は病棟オリエンテーション、看護評価、採血・検温などの基本チェックのほか、麻酔科での最終診察(麻酔方法、術後鎮痛、既往歴やアレルギーの確認)が行われます。

術式と切除範囲、リンパ節郭清の程度、合併症対策について外科医から再確認があり、不明点はここで解消しておきます。

手術前日は、指示に従って食事制限や絶飲食を開始し、必要に応じて腸管・胃内容の調整、入浴・清拭、創部の剃毛(施設方針により不要の場合あり)を行います。

夜間は十分な睡眠を確保し、翌日の流れや痛み対策について再確認します。

手術当日は、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置による深部静脈血栓(DVT)予防、点滴ラインの確保、必要に応じて硬膜外カテーテル留置(術後鎮痛用)、尿道カテーテルの挿入などを行い、手術室へ移動します。

全身麻酔下で手術が行われ、家族には開始・終了の連絡が入ります。手術時間は術式や癒着の有無、リンパ節郭清の範囲により大きく変動します。

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時期主な内容検査・処置生活上のポイント
入院日病棟手続き、麻酔科・外科の最終説明、術前採血血液・心電図・胸部X線(必要時)質問事項を整理して確認、持参薬の提出
手術前日前処置、入浴・清拭、絶飲食開始点滴準備、必要に応じて栄養補助睡眠をしっかりとる、不安があれば相談
手術当日病棟で最終確認後、手術室へ弾性ストッキング、DVT予防装置、硬膜外・尿道カテーテル等医療者の指示に沿って安全優先で進行します

手術後から退院までの回復過程

手術直後は回復室またはICU/HCUで全身状態(呼吸・循環・出血・痛み)を集中的に観察し、その後病棟へ戻ります。

術後鎮痛は硬膜外鎮痛、静脈内自己調節鎮痛(PCA)、内服鎮痛薬などを組み合わせ、痛みスコアを見ながら調整します。

呼吸理学療法(深呼吸、咳嗽訓練、インセンティブスパイロメータ)と早期離床は肺合併症や血栓症の予防に重要です。

点滴やドレーン、尿道カテーテル、創部の管理は状態に応じて段階的に軽減されます。

飲水・食事は吻合部の状態や腸の動き(排ガス・排便の有無)を見ながら、水分→流動食→軟食へと進めます。

腹腔鏡・ロボット支援手術は創部が小さいため、開腹手術より回復が早い傾向がみられますが、個人差があります。

退院の目安は、発熱や感染兆候がない、内服で痛みがコントロールできる、必要量の飲食が可能、ふらつきなく歩行できる、在宅での創部ケアが理解できている、などです。

縫合不全や出血、肺合併症など予期せぬ事態では入院期間が延びることがあり、回復計画は安全を最優先に柔軟に見直されます

術後の一般的な流れはがん情報サービス(手術と周術期の流れ)に整理されています。

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術後の時期(例)活動・離床飲水・食事機器・処置目標・確認事項
術後当日〜翌日ベッド上体位変換、座位〜立位を開始口腔保湿、少量の飲水開始(指示に従う)酸素投与、点滴、疼痛管理(硬膜外/PCA)呼吸練習、痛みスコアの評価と調整
術後2〜3日病棟内歩行、階段練習(体力に応じて)流動食〜三分粥へ段階的に進める尿道カテーテルの抜去検討、ドレーン排液の確認排ガス・排便の確認、吐き気対策
術後4〜6日日常生活動作(ADL)の自立度向上五分粥〜軟食へ、摂取量の安定化ドレーン抜去(適宜)、内服鎮痛への切り替え創部チェック、自己管理の習得
術後7日以降退院に向けた生活リハーサル個別の栄養指導(少量頻回・蛋白/エネルギー補給)退院時指導、次回外来予約在宅で安全に過ごせる目安を満たして退院

胃全摘後はビタミンB12欠乏や鉄・カルシウム不足などの栄養課題が生じやすいため、退院後の外来で採血・栄養相談・補充療法を計画します。

幽門側胃切除や噴門側胃切除でも食事量の減少や体重減少がみられるため、栄養士と連携しながら少量頻回食・間食の活用・たんぱく質強化などを継続します。

こうした術後管理のポイントはがん情報サービス(胃がんの治療)に記載されている関連情報も参考になります。

「どのくらいで退院できるか」「いつから食べられるか」は、術式・合併症の有無・体力により個人差が大きく、担当チームが毎日評価して最適なペースを提案します

不安や症状(発熱、強い痛み、息苦しさ、吐き気・嘔吐、創部の赤みや腫れ、黒色便など)があれば、遠慮なく早めに医療者へ相談してください。

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手術の入院期間と費用の目安

この章では、手術方法ごとの入院期間、医療費の内訳、そして自己負担を最小化する具体的な制度の使い方までを一気通貫で解説します。

「自分のケースでどれくらいの入院日数・費用がかかるか」「いつ、どの手続きをすれば自己負担を抑えられるか」をイメージできる内容にしました。

情報は公的機関の一次情報を確認できるように、適宜リンクを明示しています。

手術方法別の平均的な入院期間

入院期間は年齢・合併症・病院のクリニカルパス(標準的な入院計画)で変動しますが、国内の一般的な運用では以下が目安です。

退院後の回復や食事再開の速度も施設により差があります。

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手術(治療)方法主な対象入院期間の目安補足
内視鏡治療
(ESD/EMR)
早期胃がん(リンパ節転移リスクが低い)3~7日出血・穿孔がなければ短期退院。抗凝固薬内服中は延長する場合あり。
腹腔鏡下手術
(幽門側切除・胃全摘など)
早期~一部進行胃がん8~14日創部が小さく回復が早い傾向。飲水・食事再開は術後1~3日目が目安。
ロボット支援下手術適応を満たす症例8~14日保険適用。腹腔鏡手術と同等の入院日数が一般的。
開腹手術進行胃がん、癒着・合併症リスクが高い症例12~21日創部が大きく回復に時間を要しやすい。腸管機能の回復待ちで延長も。
合併症が生じた場合縫合不全・出血・感染など個別判断(延長)栄養療法や再手術・ドレナージが必要な場合は入院延長。

標準的な術後経過や再発フォローの概略は、国立がん研究センター「がん情報サービス」の解説が参考になります(治療の考え方・手術の位置づけ等)。がん情報サービス 胃がん

胃がん手術にかかる費用の内訳

日本では公的医療保険(健康保険・国民健康保険)が適用され、通常は自己負担1~3割です。

入院医療は包括支払い(DPC/PDPS)と出来高の組み合わせで計算され、病院や病態で総医療費は変わります。

以下は「どの費目にお金がかかるか」を整理したものです。

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費用項目概要保険適用の目安患者の自己負担の考え方
手術料(ESD/EMR/切除術)術式・切除範囲・リンパ節郭清の有無で変動原則適用(ロボット支援下胃切除も保険適用)自己負担1~3割。高額療養費制度の対象。
麻酔・周術期管理料全身麻酔、術中管理、術後疼痛管理など適用高額療養費制度の対象。
検査・画像採血・心電図・胸腹部CT・内視鏡など適用入院前外来分も同月なら合算可能。
薬剤費抗生剤、制酸薬、静脈栄養、鎮痛薬ほか適用使用量・日数で変動。
入院基本料(室料差額除く)看護・給食管理等を含む基本部分(DPC)適用日数に比例。病院の機能評価で点数差あり。
入院時食事療養費1食あたりの標準負担額適用(定額自己負担)一般は1食460円(公的水準)。厚生労働省の案内を参照。
差額ベッド代(特別療養環境室)個室・少人数室などの室料差額保険適用外希望・病状で選択。病院ごとに料金設定。
リハビリ・栄養指導周術期リハ、嚥下・栄養管理多くが適用病状・必要度で変動。
先進医療・自由診療保険外併用療養(該当技術のみ)対象技術のみ先進医療費は全額自己負担。先進医療の制度参照。

同じ手術でも、術式(腹腔鏡/開腹)、入院日数、合併症の有無、差額ベッドの利用で総額が変わります。

自己負担は「窓口3割負担」よりさらに下がる可能性が高く、高額療養費制度の上限で頭打ちになるのが一般的です(次節で上限額と手続き方法を説明)。

治療の全体像や標準治療の位置づけは公的な一次情報で確認できます。がん情報サービス:胃がんの治療

高額療養費制度など医療費の負担を軽減する方法

公的医療保険には、月ごとの自己負担額に上限を設ける高額療養費制度があります。

入院前に「限度額適用認定証」を取得・提示すれば、会計時から自己負担が上限までに抑えられます(事後申請で払い戻しも可)。

制度の詳細は厚生労働省の公式解説が一次情報です。高額療養費制度のご案内(厚生労働省)

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ポイント概要と実務のコツ参考リンク
月単位の上限1日~末日までの自己負担に上限あり。
70歳未満は所得区分で
「252,600円+(総医療費−842,000円)×1%」
「167,400円+(総医療費−558,000円)×1%」
「80,100円+(総医療費−267,000円)×1%」
「57,600円」「35,400円」等の区分(多数回該当の減額あり)。
厚生労働省:高額療養費制度
限度額適用認定証加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合・国保)に事前申請。原則即日~数日で発行。入院窓口へ提出。協会けんぽ:限度額適用認定証
多数回該当直近12か月で3回以上上限に達した場合、4回目以降はさらに上限が低くなる取り扱いあり。厚生労働省:高額療養費制度
世帯合算同一世帯の同一保険の家族分と同月の外来・入院自己負担を合算できる場合あり。厚生労働省:高額療養費制度
高額医療・高額介護合算制度医療と介護の自己負担を年単位で合算し、上限超過分を払い戻す仕組み。厚生労働省:高額医療・高額介護合算制度
医療費控除(確定申告)年間の自己負担や交通費等が一定額を超えると所得控除。領収書・明細書を保存。国税庁:医療費控除
民間保険・公的給付生命保険の入院・手術給付金、会社員は傷病手当金(条件あり)も確認。協会けんぽ:傷病手当金

具体的な負担額のイメージを持つために、標準的なケースで「窓口3割負担」と「高額療養費制度適用後」の違いを確認しておきましょう。

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ケース総医療費(保険適用分)3割負担の概算高額療養費制度適用後(70歳未満・区分ウの例)備考
内視鏡治療(ESD)
入院5日
約50万円約15万円約82,430円(80,100円+(500,000円−267,000円)×1%)同月の他の外来費用も合算対象。
腹腔鏡下幽門側胃切除
入院10日
約150万円約45万円約92,430円(80,100円+(1,500,000円−267,000円)×1%)多数回該当ならさらに減額(例:区分ウで44,400円)。

高額療養費制度を前提にすると、実際の自己負担は「手術の種類が違っても月上限付近に収れん」することが多いのが実務上のポイントです。

差額ベッド代・先進医療費などの保険外費用は高額療養費の対象外なので、入院前に病院の相談窓口で必ず確認しましょう。

制度の一次情報は以下を参照してください。厚生労働省:高額療養費制度

治療や費用の不安について相談したい場合は、全国のがん相談支援センター(無料)を活用できます。

相談先は公的サイトで検索可能です。がん相談支援センター(がん情報サービス)

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胃がん手術のリスクと合併症

胃がんの手術は、がんの根治と再発リスクの低減をめざす標準治療です。

一方で、術式(内視鏡治療・腹腔鏡下手術・開腹手術・ロボット支援下手術)、切除範囲(幽門側胃切除・胃全摘・噴門側胃切除)、リンパ節郭清の程度(D1/D1+/D2)、患者さんの年齢・併存疾患(糖尿病・心疾患・呼吸器疾患など)や栄養状態によって合併症のリスクは変わります。

手術のメリットとリスクを事前に具体的に理解し、予防策と早期対応のポイントを知っておくことが、安全で質の高い周術期管理につながります。

合併症は「手術中」と「手術後(早期・晩期)」に大別できます。

以下に代表例と主な対策を整理します。

詳しい基礎情報は、国立がん研究センターの解説も参考になります(国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」)。

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合併症主な症状・所見起こりやすい時期関連しやすい状況主な予防・早期対策
出血血圧低下、脈拍増加、貧血術中〜術後早期広範囲切除、郭清範囲が広い場合出血点の確実な止血、凝固能管理、必要時の輸血
周囲臓器損傷腹痛、炎症反応上昇、膵液漏や脾損傷 など術中〜術後早期D2郭清、癒着が強い症例解剖の把握・丁寧な剥離、術中迅速対応
縫合不全(吻合部・断端)発熱、腹痛、飲水や食事での胸痛・背部痛、ドレーンから消化液術後3〜10日前後吻合部の血流不良、栄養不良、糖尿病吻合部血流評価、術後の慎重な食事再開、抗菌薬投与・ドレナージ
膵液漏・腹腔内膿瘍発熱、腹痛、アミラーゼ上昇術後早期膵周囲郭清、脾門周囲操作ドレーン管理、画像下ドレナージ、栄養管理
創部感染(SSI)創部の発赤・腫脹・排膿、発熱術後早期創の汚染、肥満、糖尿病周術期抗菌薬の適正投与、創管理、血糖コントロール
肺合併症(肺炎・無気肺)発熱、咳、痰、息切れ、SpO2低下術後早期高齢、喫煙歴、呼吸器疾患早期離床、呼吸リハビリ、口腔ケア、禁煙
血栓塞栓症(DVT/PE)下肢の痛み・腫れ、息切れ、胸痛術後早期〜退院後長時間手術、長期安静、脱水弾性ストッキング・間欠的空気圧迫、早期歩行、必要時抗凝固
腸閉塞(イレウス)腹満、嘔吐、排ガス・排便停止術後早期〜数週間癒着、吻合部浮腫食事の段階的再開、腸管減圧、必要時手術
ダンピング症候群動悸、めまい、腹痛、冷汗、低血糖術後晩期まで持続胃全摘、幽門側胃切除(とくにBillroth II, Roux-en-Y)少量頻回食、糖質のとり方工夫、水分と食事の分離、栄養指導
逆流性食道炎・吻合部狭窄胸やけ、つかえ感、嚥下困難術後晩期噴門側胃切除、食道胃吻合PPI等の薬物療法、内視鏡的バルーン拡張、食事工夫
栄養障害・貧血体重減少、倦怠感、息切れ、しびれ(B12欠乏)術後晩期胃全摘、摂食量低下管理栄養士の指導、鉄・ビタミンB12補充(内服/注射)

手術中に起こりうる合併症

術中合併症は、手術そのものや麻酔管理に直接関係するイベントです。

術前評価と熟練したチームによる対策で多くは回避・軽減できますが、ゼロにはできません。

予定していた術式から開腹への移行(コンバージョン)が必要になることもあります。

出血・輸血が必要になる場合

胃がん手術は血流の多い領域(短胃動静脈・左胃動静脈・脾門周囲など)と近接しており、郭清の範囲が広いほど出血リスクが上がります。

出血量が多い場合は輸血が必要になることがあります。

出血は術後の回復にも影響するため、術中は出血点の確実な止血と、血圧・凝固能の綿密なモニタリングで管理します。

周囲臓器の損傷(脾臓・膵臓・肝臓など)

胃の背側には膵臓、左側には脾臓が位置し、D2郭清ではこれらの周囲を詳細に剥離します。

まれに損傷が起こり、膵液漏や脾出血につながることがあります。

癒着が強い再手術例や炎症の既往がある場合に注意が必要です。

麻酔に伴う合併症

全身麻酔により、血圧変動、気道関連トラブル、薬剤アレルギー(アナフィラキシー)などが起こることがあります。

麻酔科専門医による術前評価と周術期管理が安全性を高めます。

麻酔の安全性とリスクについては日本麻酔科学会の解説が参考になります(日本麻酔科学会)。

体位・長時間手術に伴う合併症

長時間の仰臥位・開脚位などにより、まれに末梢神経障害や褥瘡、血栓形成が起こり得ます。

圧迫の予防、パッドの適正配置、体温管理、必要に応じた抗血栓対策を行います。

腹腔鏡・ロボット手術特有のリスク(気腹、開腹移行など)

腹腔鏡・ロボット支援下手術では、二酸化炭素で腹腔内を膨らませる「気腹」による生理変化(CO2吸収による一過性の高二酸化炭素血症など)、ポート部位の出血・感染、機器トラブル時の開腹移行などが想定されます。

低侵襲手術の利点を活かすには、術者・施設の習熟度と適切な適応が重要です。

手術後に注意したい合併症と後遺症

術後合併症は、早期(〜術後数週間)と晩期(数か月〜長期)に分けて把握します。

早期は生命予後に関わるものを見落とさないことが最優先、晩期は栄養と生活の質(QOL)を守るための継続的な支援が鍵です。

縫合不全(吻合部・断端)の兆候と対応

食道と残胃・小腸のつなぎ目(吻合部)や断端の縫合が不完全な場合、消化液や内容物が漏れます。

発熱、腹痛、食事時の胸背部痛、ドレーンの性状変化などがサインです。

診断には採血・造影CT・造影検査を用い、早期に抗菌薬や経皮的ドレナージ、絶食・栄養管理(静脈栄養や経腸栄養)を行うことで重症化を防ぎます。

必要に応じ内視鏡的ステントや再手術が検討されます。

膵液漏・腹腔内膿瘍

膵周囲郭清後に膵液が漏れると、炎症や感染を引き起こし腹腔内膿瘍の原因になります。

ドレーン排液のアミラーゼ測定や画像検査で評価し、ドレーン留置の継続・抗菌薬・栄養管理が中心です。

多くは保存的に改善しますが、難治例では追加ドレナージや介入が必要です。

術後出血・創部感染(SSI)

術後の消化管内や腹腔内出血は、血圧低下・貧血・黒色便・吐血などで気づかれることがあります。

創部感染(手術部位感染:SSI)は発赤・熱感・排膿が目安です。

予防には、周術期抗菌薬の適正な投与、創部の清潔保持、血糖コントロールが有効です。

肺合併症(肺炎・無気肺)と血栓塞栓症(DVT/PE)

全身麻酔や術後の痛みにより呼吸が浅くなると、無気肺や肺炎のリスクが高まります。

口腔ケア、呼吸理学療法、鎮痛の最適化、早期離床が重要です。深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)は術後の重大合併症で、弾性ストッキング、間欠的空気圧迫装置、早期歩行、必要に応じた抗凝固療法で予防します。

腸閉塞(イレウス)・胃排出遅延

術後の癒着や吻合部の浮腫で腸の通過が悪くなることがあります。腹満・嘔吐・排便停止が続く場合は受診が必要です。

多くは絶食・点滴・減圧で改善しますが、改善しない場合は内視鏡的または外科的治療を検討します。

ダンピング症候群(早期・晩期)

胃切除後に食物が急速に腸へ移行することで、食後早期の動悸・発汗・腹痛・めまい(早期ダンピング)や、食後数時間後の低血糖症状(晩期ダンピング)が起きます。

少量頻回食、砂糖・清涼飲料の急速摂取を避ける、水分は食事と分ける、食物繊維やたんぱく質を先に摂る等の食事療法が基本です。

症状が強い場合は、内科での栄養・薬物治療を併用します。

逆流性食道炎と吻合部狭窄

とくに噴門側胃切除や食道胃吻合では、胃内容の逆流により胸やけ・咳・咽頭違和感が出ることがあります。

PPIなどの薬物療法と、就寝前の飲食を避ける・上体を挙上する等の生活工夫が有効です。

食物のつかえ感が続く「吻合部狭窄」は、内視鏡バルーン拡張で改善が期待できます。

栄養障害・体重減少と貧血(鉄・ビタミンB12)

胃切除後は食事量の減少や消化吸収の変化から体重が落ちやすく、鉄欠乏性貧血や、胃全摘ではビタミンB12の吸収低下による巨赤芽球性貧血が問題になります。

管理栄養士による個別栄養指導、鉄剤やビタミンB12(内服または定期的な筋注)補充、骨粗鬆症予防(ビタミンD・カルシウム、必要時骨代謝薬)など、退院後の長期フォローが重要です。

胆石・胆嚢炎、その他の長期的影響

胃切除後は胆嚢の運動低下などから胆石が生じることがあります。

上腹部痛・発熱・黄疸などがあれば受診してください。

ほかにも脂肪便、膵外分泌機能低下、腸内細菌叢の変化などが関与する消化器症状が現れることがあります。

生活の質(QOL)への影響と支援

食事・体重・体力の変化、不安や睡眠障害など、QOLへの影響は個人差が大きいものの適切な支援で改善します。

病院の栄養外来・リハビリテーション科・緩和ケアチームを早期から活用しましょう。

手術成績や合併症対策の取り組みは各施設で公表されていることがあり、外科手術の全国データベースも参考になります(National Clinical Database(NCD)、学術情報は日本胃癌学会)。

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退院後にこの症状があれば受診・連絡の目安考えられる問題の例
38℃以上の発熱、悪寒が続く当日中に手術施設へ連絡縫合不全、膿瘍、肺炎、尿路感染
増悪する腹痛、持続する吐き気・嘔吐早めに受診(救急を含む)腸閉塞、出血、縫合不全
黒色便・鮮血便、吐血、強いめまい至急受診消化管出血、貧血進行
創部の強い痛み・赤み・膿、創が開く当日中に診療科へ連絡創部感染(SSI)、創離開
息切れ・胸痛、片脚の腫れや痛み救急受診肺塞栓症、深部静脈血栓症
食事が進まない、急な体重減少早めに外来で相談狭窄、栄養障害、ダンピング、逆流
しびれ・倦怠感・息切れが長く続く外来で相談ビタミンB12欠乏、鉄欠乏性貧血

手術の安全性を高め、合併症を減らす最善策は、術前からの「チーム医療」と患者さん自身の準備(禁煙、口腔ケア、適切な運動と栄養、併存疾患のコントロール、十分なインフォームド・コンセント)です。

不安や疑問は遠慮なく主治医・看護師・管理栄養士・薬剤師に相談し、必要に応じてセカンドオピニオンも活用しましょう(基礎情報は国立がん研究センター がん情報サービスが整理されています)。

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手術後の生活と食事について

胃がんの手術後は、胃の貯留・消化機能の低下や消化管の通過の変化により、食べ方と生活リズムを見直すことが必要になります。

特に退院直後の数週間〜数カ月は体重減少や倦怠感、食後症状(胸やけ、吐き気、動悸、眠気など)が起こりやすいため、栄養管理と生活のコツを押さえることが大切です。

最初の目標は「少量頻回」「よく噛む」「甘い飲み物を避ける」「食事と水分をずらす」の4点を確実に身につけることです。

詳しく解説します。

退院後の食事で最も重要なポイント

術式(内視鏡治療・腹腔鏡手術・開腹手術・胃全摘/部分切除)によって回復ペースは異なりますが、共通して「食べ方」が症状を大きく左右します。

エネルギーとたんぱく質を不足させないこと、単純糖質を控えること、消化にやさしい調理にすることが基本です。

栄養補助食品(ONS)の活用やビタミンB12などの補充は、主治医・管理栄養士の指示に従って調整しましょう。

参考: 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」

食事の回数と一回の量

1回量は少なく、回数は多くが鉄則です。

目安としては1日5〜6回(朝・昼・夕+間食2〜3回)に分け、1回量は術前の1/2〜1/3から開始して、症状がなければ徐々に増量します。

食事と水分は同時に摂ると「一気に腸へ流れ込み」やすくなるため、食事と水分は30〜60分程度ずらすと不快症状の予防に役立ちます。

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時間帯食事例(開始〜慣れてきた頃)ポイント
朝食やわらかいご飯(小盛)またはお粥+白身魚/豆腐の煮物+味噌汁(具多め・汁少なめ)汁物は具中心に。汁は控えめにして水分の一気流入を避ける。
午前の間食ヨーグルト(無糖)+きなこ/チーズ少量/卵豆腐たんぱく質源を必ず入れる。
昼食やわらかいうどん(具に鶏ささみ・卵)麺はよく噛み、スープは飲み干さない。
午後の間食バナナ半本+無塩ナッツ少量/栄養補助飲料(指示がある場合)甘味飲料は避け、果物は1回量を控えめに。
夕食やわらかいご飯(小盛)+白身魚の蒸し物+温野菜(にんじん・かぼちゃ・ブロッコリーなど)油は少量から。蒸す・煮るなど消化にやさしい調理法を中心に。
就寝前(必要時)牛乳(低脂肪)少量または豆乳/クラッカー就寝直前の大量摂取は避ける。逆流がある場合は控える。

ゆっくりよく噛むことの重要性

胃の貯留機能が低下すると、「よく噛んでゆっくり食べる」ことが一種の“代替機能”になります。

1口20〜30回を目安に咀嚼し、1口ごとに箸を置く、早食いを防ぐために食事時間を15〜30分確保する、といった工夫が有効です。

よく噛むことで食塊が細かくなり、腸への流入速度が緩やかになってダンピング症状の予防にもつながります。

術後におすすめの食事と避けるべき食事

以下は退院後1〜3カ月の目安です。個人差が大きいため、症状の有無や体重変化をみながら主治医・管理栄養士と調整してください。

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区分おすすめ控えたい/注意点
主食お粥〜やわらかいご飯、やわらかいうどん、食パン(薄切り・よく噛む)もち、硬いパン、玄米・雑穀の割合が多いご飯(開始直後は避ける)
たんぱく質白身魚、鶏ささみ、豆腐、卵、ひき肉の煮物・蒸し物脂身の多い肉、揚げ物、スジが多く硬い肉
野菜・果物温野菜(にんじん・かぼちゃ・じゃがいも・葉物のやわらか煮)、熟したバナナ生野菜の大盛り、繊維が硬いもの(ごぼう・れんこん)は細かく・よく加熱して少量から
乳製品・菓子ヨーグルト(無糖)、牛乳は少量から砂糖の多い菓子・清涼飲料、アイス・プリンなど甘味の強いデザートはダンピングを誘発
飲み物水、麦茶、白湯(食間に少しずつ)食事中の大量の水分、炭酸飲料、アルコール、カフェインが強い飲料は症状を悪化
調理法煮る・蒸す・茹でる・電子レンジでやわらかく揚げる・直火で強い焦げ目(消化に負担)。香辛料の強い料理は症状に応じて調整

栄養補助として、医療者の指示で経口栄養補助食品(高たんぱく・高エネルギーの飲料やゼリー)を使うことがあります。

胃全摘後は内因子欠乏によるビタミンB12不足が必発のため、定期的な補充(注射または内服)が必要です。

鉄、カルシウム、ビタミンDなどの不足にも注意し、採血結果に応じて補充を行います。

ダンピング症候群や逆流性食道炎への対策

ダンピング症候群は、食後に動悸・冷汗・めまい・腹痛・下痢・強い眠気などが現れる状態で、早期(食後30分以内)と後期(食後1〜3時間)の2種類があります。

食物が急速に腸へ移行することや血糖の急上昇/急下降が関与します。

食べ方の工夫が最重要の治療です。参考: MSDマニュアル家庭版「ダンピング症候群」

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症状起こりやすい時期予防のコツ出た時の対処
動悸
冷汗
腹部不快
下痢(早期)
食後10〜30分少量頻回、食事と水分を分ける、砂糖の多い飲食を避ける、たんぱく質・脂質を適度に横になって安静(できれば左側臥位)、衣服を緩める、症状が強い食品を特定し次回以降控える
強い眠気
ふるえ
空腹感(後期)
食後1〜3時間白砂糖・果糖を控える、全粒粉・食物繊維・たんぱく質を一緒に摂る、間食を活用牛乳やクラッカーなど吸収が緩やかな間食を少量、医師の指導下で薬物療法を検討

逆流症状(胸やけ、酸っぱい液の逆流、咳)は、特に噴門側胃切除後や食道胃接合部に近い再建で起こりやすい傾向があります。

対策は次の通りです。

食後2時間は横にならない、就寝時は頭側を10〜15cm高くする、ベルトや腹圧の強い衣類を避ける、遅い時間の夕食・過食を避ける、脂っこい料理・アルコール・カフェイン・チョコレート・柑橘の取り過ぎに注意

必要に応じて、医師の指示で胃酸分泌抑制薬などを使用します。症状が続く、体重が落ち続ける、黒色便・吐血などがあれば早めに受診してください。

仕事や運動への復帰時期の目安

復帰の時期は年齢、併存疾患、術式、合併症の有無で大きく変わります。

最終判断は主治医の許可に従いましょう。以下は合併症がないケースの一例です。

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術式日常動作・軽い散歩デスクワーク/在宅勤務力仕事・長時間立ち仕事/スポーツ腹圧を強くかける動作(重い物持上げ等)
内視鏡手術(ESD/EMR)退院直後〜数日で再開1〜2週で可能なことが多い医師と相談し段階的に出血予防のため1〜2週は控える
腹腔鏡下胃切除退院後すぐに短時間から2〜4週を目安(疲労度に応じて短縮/延長)4〜6週以降に徐々に術後6〜8週は避ける
開腹胃切除退院後すぐに短時間から3〜6週を目安6〜8週以降に徐々に術後8週程度は避ける

運動は、痛みが強くならない範囲での散歩から開始し、時間・距離を少しずつ延ばすのが基本です。

筋力低下が目立つ場合は、理学療法士の指導で体幹・下肢の軽い筋力トレーニングを取り入れましょう。

自動車運転、入浴(湯船)、出張・旅行、温泉などの再開時期も主治医に確認してください。

退院後の通院と定期的な経過観察

再発の早期発見、栄養状態の把握、欠乏症の予防(ビタミンB12、鉄、カルシウムなど)、合併症の確認のため、計画的なフォローアップが重要です。

「再発フォロー」と「栄養・生活支援」の両輪で進めます。

具体的な間隔・検査は病期や病理により異なるため、以下は一般的な一例です。

詳細は診療科の方針に従ってください。参考: 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」 / 学会情報: 日本胃癌学会

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時期受診頻度の目安主な確認項目検査例
退院〜2週1回創部、食事摂取量、体重、便通、薬の調整診察、必要に応じ採血
1〜3カ月月1回程度(症状に応じ増減)体重推移、栄養状態、食後症状(ダンピング・逆流)、貧血血液検査(血算・鉄関連・電解質・肝腎機能)、栄養指導
術後0〜2年3〜6カ月ごと再発徴候、栄養/内分泌代謝、欠乏症の予防診察、採血(CEA/CA19-9は方針により)、CTなど画像検査は必要に応じて
術後3〜5年6〜12カ月ごと晩期合併症、骨・筋力低下、生活の質(QOL)診察、採血、画像検査は症状・方針により
残胃の内視鏡(部分切除の方)年1回程度(施設方針により)残胃炎、逆流性食道炎、残胃のがんのチェック上部消化管内視鏡
ビタミンB12補充(胃全摘の方)定期(数カ月ごとなど)B12欠乏による貧血・しびれ予防B12補充(注射/内服)、血中B12測定

次のような場合は予定外でも受診してください。

持続する発熱(38℃以上)、強い腹痛や嘔吐、黒色便や血便、急な体重減少、脱水症状、食事が入らない状態が続くなど。

早めの対応が回復を助けます。

情報収集は信頼できる公的機関の資料を活用しましょう。

治療・生活全般はがん情報サービス(胃がん)、食後症状の理解にはMSDマニュアル「ダンピング症候群」が参考になります。

臨床方針は施設ごとに異なるため、必ず主治医・管理栄養士と個別にご相談ください。

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患者会の紹介

胃がんの手術を受けると、術後の食事・ダンピング症候群・体力低下・就労と治療の両立など、医学的課題と生活上の悩みが同時に生じます。

こうしたときに有効なのが、同じ経験をもつ仲間とつながる「患者会(ピアサポート)」です。

患者会は、体験談の共有、最新情報の学習、専門職(医師・看護師・管理栄養士・医療ソーシャルワーカー)との橋渡し、家族やケアギバーの孤立防止に役立ちます。

ただし、参加先は運営主体・信頼性・参加条件・個人情報の扱いを確認したうえで、自分の病期や治療法(ESD/EMR、幽門側胃切除、胃全摘、噴門側胃切除など)に合った場を選ぶことが重要です

おすすめの患者会

患者会には「病院内の患者サロン」「消化器がんを含む横断的な全国ネットワーク」「胃がん・胃切除に焦点を当てた地域の交流会」「オンライン特化型」など複数のタイプがあります。

以下は、実績があり国内で広く認知された窓口や団体、ならびに信頼できる一次情報源です。参加費や開催頻度は企画により異なるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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種類運営・公式情報主な対象主な活動参加方法・費用信頼性チェックの要点
病院内の患者サロン
(がん相談支援センター主催)
国立がん研究センター がん情報サービス
各「がん診療連携拠点病院」のサロン・交流会情報
術前・術後の胃がん患者、家族、遺族交流会、ピアサポート、専門職による勉強会(栄養・就労・療養生活)各病院の案内に従い申込。原則無料公的病院主催
個人情報の扱い
医療者同席の有無
参加規約
横断的NPOのサポート
(全国)
認定NPO法人 キャンサーネットジャパン(CNJ)
NPO法人 キャンサーサポートコミュニティ
がん種横断(消化器がん・胃がん含む)セミナー・ウェビナー、専門家講演、ピアグループ、情報提供オンライン/対面。無料〜一部有料(企画により異なる)医療者監修の有無
記録の公開方針
寄付や会費の透明性
胃がん・胃切除に焦点を当てた
地域の交流会
各地域の拠点病院・保健所・医療者主導の自主グループ
(案内はがん情報サービスや各病院サイトで周知)
胃全摘/部分切除/ESD後の方、家族術後の食事工夫、ダンピング対策、体重・栄養管理、就労の経験共有事前予約制が多い。無料〜実費主催者の素性
会則
宗教・政治からの独立
撮影・記録のルール
学会・公的機関の一般向け情報
(一次情報源)
日本胃癌学会(一般向け情報)
国立がん研究センター がん情報サービス
患者・家族・支援職病期・治療・術後ケアの解説、受診先・相談先の探し方ウェブで自由閲覧(無料)作成主体が公的・学術機関であること
更新日
エビデンスの出典

参加先を選ぶ際は、次の点を確認しましょう。

1) 自分の治療法に近い仲間がいるか(例:胃全摘後の食事・サプリ・栄養指導の話題があるか)

2) 医療者や管理栄養士の関与があるか

3) オンライン/対面の開催形式と頻度

4) 個人情報の扱いと撮影・録音に関するルール

5) 参加費・年会費・寄付の透明性です。

迷ったら、拠点病院の「がん相談支援センター」や主治医・医療ソーシャルワーカーに紹介を依頼すると安心です。

加入前の相談窓口

患者会は性質や雰囲気が団体ごとに異なります。

加入を急がず、治療と家計・就労・保険・制度活用まで含めた全体像を整理した上で、自分に合う支援につながることが大切です。

そこで、患者会選びや制度活用の要否を中立的に整理する窓口として「CancerFP(キャンサーFP)」の活用をおすすめします。

CancerFPは、がん療養とお金・仕事・公的制度の視点から、患者会や支援資源の選び方も含めて伴走支援する相談サービスです。

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相談内容の例具体的なサポート想定タイミング費用・守秘
患者会の選び方病期・術式・生活課題(食事、体重、復職、家族ケア)に合った会の候補整理、参加時の留意点の説明手術前〜退院直後、復職前後相談可否と費用体系を事前提示。個人情報は目的外利用なし
制度・お金高額療養費・限度額適用認定証、傷病手当金、医療費控除、民間保険の給付請求入院前(事前手続き)〜退院後(申請)公的制度は無料で利用可能。申請手順は文書化して提供
就労・学校主治医意見書の取り方、勤務配慮(時間・業務軽減)、産業医・人事への伝え方復職検討期、就学・進学期守秘義務を遵守し、本人同意なしの共有は不可
医療的疑問の整理主治医面談での質問リスト作成、セカンドオピニオン外来の段取り治療方針決定前後医療判断は行わず、情報整理と受診支援に特化

「どの患者会が自分に合うか分からない」「まずは制度や費用を整理してから参加したい」という方は、加入前にCancerFPへ相談し、自分の優先課題(栄養・仕事・家計・ケア)を可視化してから、最適な患者会や公的支援に進むとミスマッチを減らせます

サイト内の「相談する」から申し込みでき、オンライン・電話での対応も可能です(詳細は最新の案内をご確認ください)。

なお、公的な無料窓口としては、各地域の「がん相談支援センター」が強力です。

拠点病院の医療ソーシャルワーカーや看護師が、患者会・ピアサポート・地域資源を中立的に紹介してくれます。

最寄り窓口は国立がん研究センター がん情報サービスから検索できます。

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まとめ

胃がん手術は病期により内視鏡(ESD/EMR)から開腹・腹腔鏡・ロボット支援まで選択し、切除範囲で術後の生活が変わります。

合併症リスクを理解し、小分け食やゆっくり咀嚼でダンピングを予防。

費用は公的医療保険と高額療養費制度で負担軽減が可能。

退院後は定期受診を継続し、疑問はがん相談支援センターや国立がん研究センター情報で確認しましょう。

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