胃がんの外科手術、腹腔鏡と開腹の違いは?不安を解消するために知っておくべき全知識

胃がん 外科手術

胃がんと診断され、外科手術が必要と聞いたものの、腹腔鏡と開腹のどちらが良いのか、術後の生活はどうなるのか、多くの疑問や不安を抱えていませんか。

この記事では、胃がん手術の二大術式である腹腔鏡手術と開腹手術の違いを徹底比較し、それぞれのメリット・デメリットからロボット支援手術まで詳しく解説します。

最適な手術法は、がんの進行度や患者さんの状態によって総合的に決まります。

入院から退院後の生活、後遺症、食事、費用に至るまで、手術の全体像を理解し、安心して治療に臨むための知識を網羅的にお伝えします。

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目次

胃がんの外科手術とは どのような治療法か

胃がんの外科手術は、胃にできたがんを物理的に切除することで、がんの治癒(根治)を最も期待できる治療法です。

胃がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者さんの状態によって内視鏡治療、手術、薬物療法などがありますが、外科手術はその中心的な役割を担います。

胃がん手術の目的と切除範囲

手術の最大の目的は、がん細胞を残さず完全に取り除くことです。

そのため、がんのある部分だけでなく、安全のためにがんの周囲にある正常な胃の組織も一定の範囲を含めて切除します。

どの範囲を切除するかは、がんが発生した場所や大きさ、深さ(進行度)によって慎重に判断されます。

主な手術の種類と切除範囲は以下の通りです。

手術の種類主な対象となるがんの場所切除範囲の概要
幽門側胃切除術胃の出口(幽門)側胃の約3分の2を、周囲のリンパ節とともに切除します。
胃がん手術で最も多く行われる術式です。
胃全摘術胃の上部や広範囲にがんがある場合胃をすべて切除し、食道と小腸をつなぎ合わせます。
噴門側胃切除術胃の入口(噴門)に近い早期がん胃の上部と食道の一部を切除し、残った胃と食道をつなぎ合わせます。
幽門保存胃切除術胃の中央部にある早期がん胃の入口と出口を温存し、中間部分のみを切除します。

リンパ節郭清の重要性

胃がんの手術では、胃そのものを切除するだけでなく、「リンパ節郭清(かくせい)」と呼ばれる処置が極めて重要になります。

胃がんは、胃の壁の中にあるリンパ管を通じて、近くのリンパ節に転移しやすい性質を持っています。

目には見えない小さながん細胞がリンパ節に潜んでいる可能性があるため、再発を防ぐ目的で、がんが転移している可能性のある範囲のリンパ節を周囲の脂肪組織ごとまとめて切除します。

どの範囲のリンパ節を郭清するかは、日本胃癌学会が定める「胃癌治療ガイドライン」に基づき、がんの進行度に応じて決定されます。

このリンパ節郭清を適切に行うことが、手術の根治性を高める上で非常に重要な要素となります。

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胃がんの二大外科手術 腹腔鏡手術と開腹手術の徹底比較

胃がんの外科手術には、主に「腹腔鏡(ふくくうきょう)手術」と「開腹手術」の2つの方法があります。

どちらの手術方法を選択するかは、がんの進行度(ステージ)や体の状態によって決まります。

ここでは、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説し、どちらがご自身にとって最適な選択なのかを理解するための一助とします。

腹腔鏡手術とは 体への負担が少ない手術

腹腔鏡手術は、お腹に5mm~12mm程度の小さな穴を数カ所開け、そこから腹腔鏡と呼ばれるカメラや特殊な器具(鉗子)を挿入して行う手術です。

モニターに映し出されたお腹の中の拡大映像を見ながら、がんの切除やリンパ節郭清を行います。

傷が小さいため「低侵襲(ていしんしゅう)手術」とも呼ばれ、患者さんの体への負担が少ないのが最大の特徴です。

現在、早期の胃がんを中心に広く行われています。

メリット 傷が小さく回復が早い

腹腔鏡手術の主なメリットは以下の通りです。

  • 傷が小さく痛みが少ない
    切開創が小さいため、開腹手術に比べて術後の痛みが少なく、美容面でも優れています。
  • 回復が早く入院期間が短い
    術後の回復が早いため、食事の開始や歩行なども早期から可能となり、入院期間が短縮される傾向にあります。
    社会復帰も早めることができます。
  • 出血量が少ない
    拡大された鮮明な視野で手術を行うため、より繊細な操作が可能となり、出血量を抑えることができます。

デメリット 技術的な制約と注意点

多くのメリットがある一方、以下のようなデメリットや注意点も存在します。

  • 高度な技術が必要
    腹腔鏡手術は、執刀医の豊富な経験と高い技術が求められる手術です。
    そのため、すべての医療機関で受けられるわけではありません。
  • 触覚がない
    器具を通して操作するため、医師が直接臓器に触れて硬さなどを確認することができません。
  • 開腹手術への移行
    予期せぬ出血や、がんの広がりが想定以上だった場合などには、安全を最優先し、手術の途中で開腹手術に切り替える(開腹移行)ことがあります。
  • 適応の限界
    大きく進行したがんや、広範囲のリンパ節郭清が必要な場合には、適応とならないことがあります。

開腹手術とは 進行がんにも対応できる標準手術

開腹手術は、みぞおちからおへそのあたりまでを縦に大きく切開し、医師が直接お腹の中を見て、手で触れながらがんを切除する従来からの手術方法です。

胃がん手術の歴史において長く行われてきた「標準手術」と位置づけられており、多くの実績があります。

メリット 医師の目で直接確認しながら確実に切除できる

開腹手術の主なメリットは以下の通りです。

  • 確実な手技
    医師が直接目で見て、手で触れてがんの広がりや硬さを確認できるため、状況に応じた的確な判断がしやすく、確実にがんを切除できます。
  • 進行がんにも対応可能
    がんが周辺の臓器にまで及んでいる場合(浸潤)や、広範囲のリンパ節郭清が必要な進行がんに対しても、柔軟に対応することが可能です。
  • 緊急時の対応力
    手術中の予期せぬ出血など、トラブルが発生した場合にも迅速に対応しやすいという利点があります。

デメリット 体への負担が大きく回復に時間がかかる

開腹手術のデメリットは、主に体への負担が大きい点です。

  • 傷が大きく痛みが強い
    手術創が大きいため、腹腔鏡手術に比べて術後の痛みが強く出る傾向があります。
  • 回復に時間がかかる
    体への負担が大きいため、術後の回復に時間がかかり、入院期間が長くなることが一般的です。
  • 合併症のリスク
    傷が大きい分、創感染や、術後に腸が癒着して腸閉塞(イレウス)を起こすリスクが腹腔鏡手術に比べてやや高いとされています。

【一覧】腹腔鏡と開腹の違いが一目でわかる比較表

これまでの内容をまとめると、以下のようになります。

どちらの手術にも長所と短所があり、一概にどちらが優れているとはいえません。

ご自身の病状やライフプランについて担当医とよく相談し、納得のいく治療法を選択することが重要です。

項目腹腔鏡手術開腹手術
傷の大きさ小さい(数カ所の小さな穴)大きい(腹部を縦に切開)
術後の痛み少ない傾向強い傾向
入院期間の目安短い(約7日~10日)長い(約10日~14日)
社会復帰までの目安早い傾向時間がかかる傾向
出血量少ない傾向多い傾向
主な適応早期がんが中心(進行がんの一部も)進行がんを含め、多くの症例に対応可能
手術時間長くなる傾向がある比較的短い

ご自身の状況でどちらの手術が適しているか、さらに詳しい情報が必要な方は、専門医にご相談ください。

セカンドオピニオンを含め、複数の医師の意見を聞くことも有効です。

第三の選択肢 ロボット支援下手術とは

腹腔鏡手術と開腹手術に次ぐ第三の選択肢として、近年注目されているのが「ロボット支援下手術」です。

これは腹腔鏡手術をさらに進化させた最先端の手術法で、日本国内では「ダヴィンチ」という手術支援ロボットが広く知られています。

手術といってもロボットが自動で動くわけではなく、専門の訓練を受けた医師が、少し離れた場所にある「サージョンコンソール」と呼ばれる操縦席に座り、3Dモニターを見ながらロボットアームを遠隔操作して執刀します。

腹腔鏡手術を超える3つのメリット

ロボット支援下手術は、腹腔鏡手術の「傷が小さい」「回復が早い」といったメリットを享受しつつ、それを超える精度と安全性をもたらす可能性を秘めています。

1. 手ぶれのない精密な動き

術者の手の動きはコンピューターによって補正され、手ぶれが完全に除去された状態でロボットアームに伝わります。

さらに、アームの先端に取り付けられた鉗子(かんし)は人間の手首よりも広い可動域を持ち、多方向に自在に曲がります。

これにより、体の奥深くや狭い空間でも、リンパ節の郭清や消化管の縫合といった複雑で繊細な操作を、より正確に行うことが可能になります。

2. 奥行きまで見える3DHD画像

術者が見るコンソールのモニターには、高画質(HD)の3D映像が映し出されます。

これにより、患者さんの体内の様子を、まるでその中に入り込んでいるかのような立体感で把握できます。

血管や神経の走行、組織の重なり具合などが手に取るようにわかるため、より安全な手術につながります。

3. 術者の負担軽減

開腹手術や腹腔鏡手術では、医師は長時間立ち続けたまま執刀しますが、ロボット支援下手術では座った状態で操作を行います。

これにより、術者の身体的な疲労が軽減され、手術時間の長さにかかわらず高い集中力を維持しやすくなります。

デメリットと注意点

多くのメリットがある一方、知っておくべき注意点も存在します。

触覚がないことによる技術習熟の必要性

ロボットを介して操作するため、術者の手に臓器の硬さや縫合する際の糸の張り具合といった「触覚」が直接伝わりません。

そのため、術者は3D画像から得られる視覚情報でそれを補う必要があり、高度な技術と豊富な経験が求められます。

実施できる医療機関の限定

手術支援ロボットは非常に高価な機器であり、その操作には専門的なトレーニングを積んだ医師とチームが必要です。

そのため、ロボット支援下手術を受けられるのは、設備と人材の整った一部の医療機関に限られるのが現状です。

保険適用と費用について

胃がんに対するロボット支援下手術は、2018年4月から公的医療保険の適用対象となりました。

それ以前は先進医療や自費診療として扱われ、数百万円の費用がかかることもありましたが、保険適用となったことで、腹腔鏡手術や開腹手術と同様に高額療養費制度を利用できるようになりました。

これにより、患者さんの自己負担額は大幅に軽減されています。

【表】開腹・腹腔鏡・ロボット支援下手術の比較

開腹手術腹腔鏡手術ロボット支援下手術
傷の大きさ大きい(15~20cm程度)小さい(数か所の小さな穴)小さい(数か所の小さな穴)
術後の痛み強い傾向比較的少ない比較的少ない
回復までの期間長い短い短い
手術の精度医師の肉眼と手の感覚拡大視効果はあるが器具の動きに制限3D画像と自由度の高い動きで非常に精密
費用(保険適用時)標準標準やや高くなる傾向

より詳しい情報やご自身のケースについて相談したい方は、専門医にご相談ください。

手術方法の選択は、がんの状態やご自身の体調などを総合的に判断して決定されます。

ご自身の状況に最適な治療法を見つけるために、まずは専門医の話を聞いてみませんか?

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手術方法はこう決まる 胃がんの外科手術の選択基準

胃がんの外科手術には、腹腔鏡手術や開腹手術、ロボット支援下手術など複数の選択肢があります。

どの手術方法が最適かは、がんの状態や患者さんご自身の体の状態などを総合的に考慮して、医師と患者さんが話し合って決定します。

ここでは、手術方法を決める上で重要となる2つの大きな基準について解説します。

がんの進行度(ステージ)と発生した場所

手術方法を決定する最も重要な要素は、がんの進行度(ステージ)です。

ステージは、がんが胃の壁のどの深さまで達しているか(深達度)、リンパ節への転移があるか、他の臓器への遠隔転移があるか、という3つの要素を組み合わせて決定されます。

治療方針は、日本胃癌学会が定める「胃癌治療ガイドライン」を基に検討されるのが一般的です。

がんのステージと、がんが胃のどの部分(上部・中部・下部)に発生したかによって、推奨される手術の術式(切除範囲)とアプローチ(腹腔鏡か開腹か)が変わります。

がんのステージ主な状態推奨される主な外科手術
早期がん(ステージIなど)がんが胃の粘膜または粘膜下層にとどまり、リンパ節転移の可能性が極めて低い。体の負担が少ない腹腔鏡手術が標準的に選択されることが多いです。
ただし、がんの位置や大きさによっては内視鏡治療(ESD)の対象となる場合もあります。
進行がん(ステージII・IIIなど)がんが固有筋層より深く達している、またはリンパ節への転移がある。がんを確実に取り除くため、医師が直接見て触って手術できる開腹手術が標準治療として選択されることが多いです。
近年では、施設の経験や技術によっては腹腔鏡手術やロボット支援下手術が選択されるケースも増えています。
ステージIVがんが遠隔転移している。外科手術による根治が難しく、薬物療法(化学療法)が治療の中心となります。
ただし、出血や食事の通過障害などの症状を和らげるための緩和的な手術が行われることもあります。

また、がんができた場所によって胃の切除範囲も異なります。

例えば、胃の出口(幽門)側にがんがあれば「幽門側胃切除術」、入口(噴門)側にあれば「噴門側胃切除術」、胃全体に広がっている場合は「胃全摘術」が選択されます。

患者さんの年齢や全身の状態

がんのステージだけでなく、患者さんご自身の状態も手術方法を選択する上で非常に重要な要素です。

特に、年齢や体力、持病(併存疾患)の有無が大きく影響します。

年齢と体力(PS:パフォーマンスステータス)
高齢であること自体が、手術ができない理由にはなりません。
しかし、一般的に年齢とともに体力は低下し、手術後の回復に時間がかかる傾向があります。
そのため、ご高齢の方や体力に不安のある方には、より体への負担が少ない腹腔鏡手術やロボット支援下手術が積極的に検討されることがあります。
医師は、患者さんがどの程度日常生活を自立して送れているかを示す指標(パフォーマンスステータス)なども参考に判断します。

持病(併存疾患)の有無
心臓病、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病などの持病がある場合、手術による体への負担が大きくなり、術後の合併症のリスクが高まる可能性があります。
そのため、持病の状態によっては、より侵襲の少ない手術方法を選択したり、手術の前に持病の治療を優先したりすることもあります。

最終的な治療方針は、これらの情報を基に、医師が専門的な見地から最適な方法を提案し、患者さんとご家族がその内容を十分に理解し納得した上で決定されます(インフォームド・コンセント)。

ご自身の状況でどの治療法が最適か、さらに詳しく相談したい場合は、セカンドオピニオンを利用したり、専門の相談窓口に問い合わせてみるのも良いでしょう。

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入院から退院まで 胃がん外科手術の具体的な流れ

胃がんの外科手術が決まると、入院から退院、そして社会復帰までどのような流れで進むのか、不安に感じる方も少なくないでしょう。ここでは、手術を受ける多くの患者さんがたどる一般的な経過をご紹介します。治療の全体像を把握し、安心して治療に臨むための準備を整えましょう。

入院前の準備と各種検査

手術日が決まると、手術の約1~2週間前に入院となり、安全に手術を行うための各種検査を受けます。

これらの検査は、がんの進行度を正確に把握するだけでなく、心臓や肺の機能など全身の状態を確認し、麻酔や手術に耐えられるかを判断するために不可欠です。

入院前には、医師や看護師、栄養士などから入院生活や手術後の注意点について詳しい説明があります。

不安な点や疑問点は、この機会に解消しておきましょう。

検査の種類目的
血液検査・尿検査全身の健康状態、栄養状態、肝臓や腎臓の機能などを評価します。
画像検査(CT・超音波)がんの広がりや、他の臓器への転移がないかを詳しく確認します。
心電図・呼吸機能検査心臓や肺に負担のかかる全身麻酔や手術を安全に行えるかを確認します。
内視鏡検査(胃カメラ)がんの正確な位置や範囲を再確認し、最終的な切除範囲を決定します。

手術当日と術後の経過

手術当日は朝から絶食となり、準備が整い次第、歩いて手術室へ向かいます。

手術後は、多くの場合、集中治療室(ICU)で一晩を過ごし、翌日には一般病棟へ戻ります。

術後の回復過程は、手術方法や患者さんの状態によって異なりますが、多くの病院では「クリニカルパス」という標準的な治療計画に沿って進められます。

術後日数主な内容
術後1日目ベッドから起き上がり、歩行訓練を開始します。状態が安定していれば、飲水も可能になります。
術後2~3日目点滴を続けながら、流動食などの食事が始まります。お腹に入れていた管(ドレーン)が抜けることもあります。
術後4~7日目食事の形態が徐々に固形に近づき(三分粥→五分粥など)、点滴が不要になります。シャワー浴が可能になるのもこの時期です。
術後7~14日目食事が安定して摂れ、合併症などがなければ退院となります。入院期間の目安は、腹腔鏡手術で7~10日、開腹手術で10~14日程度です。

※上記はあくまで一般的な目安であり、回復の状況には個人差があります。

退院後の生活と社会復帰の目安

退院後も、体力の回復や新しい食生活に慣れるためには時間が必要です。

焦らず、ご自身のペースで日常生活に戻していきましょう。

退院後1~2ヶ月は、体に負担の大きい仕事や満員電車での通勤は避けることが推奨されます。

社会復帰の時期は、職種によっても異なります。

デスクワークであれば術後2週間~1ヶ月程度、肉体労働であれば術後2~3ヶ月程度が目安とされていますが、必ず主治医と相談の上で決定してください。

退院後の生活や食事、仕事復帰に関してご不安な点がございましたら、専門の相談窓口でサポートを受けることも可能です。

より詳しい情報や個別の治療計画については、セカンドオピニオン外来や、お近くのがん診療連携拠点病院の相談支援センターへお問い合わせください。

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手術後の生活で注意すべきこと 後遺症と食事療法

胃を切除した後の体は、食べ物の消化・吸収の仕組みが大きく変わります。

そのため、手術後の生活では後遺症とうまく付き合い、食事に工夫を凝らすことが、QOL(生活の質)を維持するために非常に重要です。

特に退院後の約3ヶ月は、体が新しい状態に慣れるための大切な期間となります。

代表的な後遺症 ダンピング症候群とその対策

胃を切除した後に起こりやすい代表的な後遺症が「ダンピング症候群」です。

これは、胃の食べ物を溜めておく機能が失われ、食べ物が未消化のまま小腸へ急速に流れ込むことで起こる様々な不快な症状を指します。

ダンピング症候群は、症状が現れるタイミングによって「早期」と「後期」の2種類に分けられます。

早期ダンピング症候群(食後30分以内)

食べ物が急に小腸に流れ込むことで、全身の血液が腸に集まり血圧が低下したり、腸が刺激されたりして起こります。

主な症状として、動悸、めまい、冷や汗、眠気、腹痛、下痢などが挙げられます。

後期ダンピング症候群(食後2〜3時間後)

糖質の多い食事が急速に吸収されることで血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが過剰に分泌され、結果的に低血糖状態になることで起こります。

主な症状は、脱力感、めまい、冷や汗、手指の震えなどです。

ダンピング症候群の対策

ダンピング症候群を予防・軽減するためには、日々の食事の摂り方が鍵となります。

以下の点を心がけましょう。

  • 少量頻回食にする
    1回の食事量を減らし、間食を取り入れて1日5〜6回に分けて食べる。
  • よく噛んでゆっくり食べる
    食べ物が細かくなり、唾液とよく混ざることで消化を助けます。
  • 食事と水分を同時に摂らない
    水分と一緒だと食べ物が腸へ流れ込みやすくなるため、水分補給は食後30分以上経ってからが望ましいです。
  • 高糖質の食品を一度に摂りすぎない
    甘いお菓子やジュースなどは後期ダンピング症候群の原因になりやすいため注意が必要です。
  • 食後は安静にする
    食後すぐに動くと腸の動きが活発になるため、20〜30分程度は座ってゆっくり過ごしましょう。

症状がつらい場合や、対策をしても改善しない場合は、自己判断せずに必ず医師や管理栄養士に相談してください。

術後の食事で気をつけるポイントと工夫

手術後の食事は、体の回復を促し、後遺症を予防するために極めて重要です。

退院直後から数ヶ月かけて、焦らず段階的に慣らしていくことが大切です。

食事の進め方とポイント

退院後の食事は「消化の良いものを、少量ずつ、ゆっくりと」が基本原則です。

体の回復に合わせて、食事の形態や内容を調整していきます。

時期の目安食事のポイント調理の工夫
退院直後〜1ヶ月流動食に近い三分粥や五分粥から始め、徐々に全粥へ。
1日5〜6回の分割食を基本とします。
食材は細かく刻み、十分に加熱して柔らかく煮込む(煮る、蒸す、ゆでる)。
術後1ヶ月〜3ヶ月全粥から柔らかく炊いたご飯(軟飯)へ。
消化の良い白身魚や豆腐、鶏ささみ、卵などを少量ずつ試します。
引き続き油を控えた調理法を心がけます。
少量ずつ食べられるものを増やしていきましょう。
術後3ヶ月以降体調を見ながら徐々に普通食に近づけていきます。
ただし、一度にたくさん食べず、よく噛む習慣は継続します。
揚げ物や香辛料の強いものなどは、少量から試すようにしましょう。

積極的に摂りたい食品と控えたい食品

栄養バランスを保ちつつ、消化管への負担を減らすために、食品選びも重要です。

特に、体重減少を防ぎ体力を維持するために、タンパク質は意識して摂取しましょう。

積極的に摂りたい食品(消化が良く栄養価が高いもの)

  • タンパク質
    鶏ささみ、白身魚(タラ、カレイ)、豆腐、卵、脂肪の少ないひき肉など
  • 炭水化物
    おかゆ、うどん、食パン、じゃがいもなど
  • ビタミン・ミネラル
    消化の良い野菜(カボチャ、にんじん、大根など)や果物(バナナ、りんごのすりおろしなど)

注意が必要・控えたい食品

  • 食物繊維の多いもの
    ごぼう、たけのこ、きのこ類、海藻類など
  • 脂肪の多いもの
    豚バラ肉、揚げ物、バターを多く使った料理など
  • 硬いもの・弾力のあるもの
    イカ、タコ、貝類、こんにゃくなど
  • 刺激の強いもの
    香辛料(唐辛子、わさび)、炭酸飲料、アルコール類
  • 極端に熱いもの・冷たいもの
    アイスクリームなど

これらの食品も絶対に食べてはいけないわけではありませんが、特に術後3ヶ月くらいまでは避けた方が無難です。

体調が良い時に少量から試すようにしましょう。

食事について不安なことや分からないことがあれば、一人で悩まず専門家にご相談ください。

より詳しい食事の進め方やレシピについては、管理栄養士による栄養指導を受けることも有効です。

胃がんの外科手術にかかる費用と利用できる公的制度

胃がんの手術を受けるにあたり、多くの方が心配されるのが治療費ではないでしょうか。

最善の治療を受けたいと思う一方で、経済的な負担は無視できません。

しかし、日本には手厚い公的医療保険制度があり、高額な医療費の負担を軽減する仕組みが整っています。

この章では、胃がんの外科手術にかかる費用の目安と、安心して治療に専念するために知っておきたい公的制度について詳しく解説します。

手術費用の目安と内訳

胃がんの外科手術は、腹腔鏡手術・開腹手術ともに公的医療保険が適用されます。

そのため、実際に窓口で支払う自己負担額は、かかった医療費総額の1割から3割です。

医療費の総額は、手術の方法や入院日数、病院の設備などによって変動しますが、一般的に70歳未満の方の場合、3割負担で約50万円から60万円程度が目安となります。

ただし、後述する「高額療養費制度」を利用することで、最終的な自己負担額はさらに抑えられます。

手術にかかる費用の主な内訳は以下の通りです。

これらはすべて保険適用の対象となります。

項目内容
手術料手術そのものにかかる技術料や麻酔、医療機器の使用料などです。
入院料入院基本料、看護料、管理栄養士による栄養指導料などが含まれます。
検査・画像診断料術前・術後に行う血液検査、CT検査、病理検査などの費用です。
投薬・注射料抗生剤や痛み止め、点滴などの薬剤費です。
食事療養費入院中の食事代の一部です。所得に応じて定められた標準負担額を支払います。

※個室を希望した場合の差額ベッド代や、先進医療の技術料などは保険適用外となり、全額自己負担となるため注意が必要です。

高額療養費制度の活用

高額療養費制度は、1ヶ月(月の初めから終わりまで)の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超えた金額が払い戻される制度です。

この制度により、家計への負担を大幅に軽減できます。

自己負担限度額は、年齢や所得によって区分されており、例えば70歳未満で標準的な所得の方の場合、月の自己負担額は約9万円程度となります。

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まとめ

胃がんの外科手術には、主に体の負担が少ない「腹腔鏡手術」と、進行がんに対応できる「開腹手術」があります。

どちらの手術が最適かは、がんの進行度や患者さんの状態を基に専門医が判断します。

手術方法ごとの特徴や術後の生活、費用について正しく理解することは、治療への不安を和らげる第一歩です。

ご自身の状況に合った最善の治療を選択するため、主治医と十分に話し合い、納得して治療に臨むことが何よりも大切です。

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