i・Partners(アイ・パートナーズ)代表の川原拓人です。私はこれまで金融・保険の現場で、多くのがん患者さんやご家族の相談に乗ってきました。その中で痛感するのは、病気と闘うだけでなくお金の不安とも戦わなければならない現実、そして正しい情報が届かずに苦しむ方が少なくないということです。インターネット上には「奇跡の治療法」や「必ず得する保険」といった耳障りの良い話が溢れますが、科学的根拠に乏しい未承認の治療や、本当に必要な保障が得られない“怪しい”がん保険も存在します。
実際、がんに対する世論調査では、約半数もの人が「治療費が高額になる場合があるから」という理由で経済的な不安を抱いています。私はファイナンシャルプランナーとして、そうした誤った情報や悪質な商品から皆さんを守りたいと強く願っています。本記事では、川原拓人ががん保険や治療法をめぐる“不安”にどう向き合えばよいか、そのポイントをお伝えします。がんと向き合う皆さんが、正しい情報と適切なサポートによって安心して治療に専念できるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。
川原拓人が警鐘を鳴らす「正しく説明されたか「怪しい」保険契約」
がん保険は万一の備えとして心強い商品ですが、中には「保険料ばかり高くて必要な保障が足りない」ものや、加入者の不安につけ込んで不利な契約を結ばせようとするケースもあります。例えば、保険料が不当に割高であったり、更新のたびに保険料が上がる定期型のもの(終身型ではない)だったり、通院保障がほとんど付いていないなど、評判の悪いがん保険には共通する特徴があります。また、診断給付金(一時金)の支給回数が1回きりなど制約が多かったり、ネームバリューのある保険会社の商品でも内容をよく見ると保障が十分でない場合も散見されます。
実際、私が相談を受けた50代の男性Aさん(仮名)は、数年前にあるがん保険に加入していました。ところががんと診断された際、保険会社から「入院しなければ給付金は出ません」と告げられ、大きなショックを受けました。Aさんの契約していた保険は古いタイプで、入院日数が給付の条件になっていたのです。近年は通院で抗がん剤治療を続けるケースも多く、入院しないと保障がおりない保険では不十分でした。Aさんは保障内容が自分のニーズに合っていなかったことに後から気付き、不安を抱えて私のFP事務所に駆け込んできました。このケースは、契約内容を十分理解しないまま加入すると、いざというとき役に立たない恐れがあることを物語っています。
皆さんも「がん保険に入っているから大丈夫」と安心せず、一度ご自身の保障内容を見直してみてください。特に以下のポイントをチェックしましょう。
保険料の水準: 他社の商品と比べて極端に保険料が高くないか。割高な保険は貯蓄の妨げになり、長期的に家計を圧迫します。
保障期間とタイプ: 終身型か定期型かを確認。定期型で更新のたびに保険料が上がる場合、将来高齢になったときに負担が大きくなります。一生涯の保障が得られる終身型なら保険料は一生涯変わりません。
入院・通院保障: 入院給付金だけでなく、通院治療でも給付金がおりるか確認しましょう。通院保障が不十分な保険は、現代の治療実態に合っていません。
診断一時金の内容: がんと診断されたときの一時金が十分な額か、複数回受け取れるかを確認しましょう。回数制限が厳しすぎる商品は要注意です。
先進医療・自由診療への備え: 保険診療ではない高額治療(先進医療や未承認薬を使う自由診療)に対応する特約が付けられるか検討しましょう。必要に応じてこうしたオプションも視野に入れるべきです。ただし必ず利用できるわけではないことに注意が必要です。
以上の点を踏まえ、自分に合ったがん保険かどうか、ぜひ専門家にも相談しながら検討してください。大手の保険だから安心、と盲信せず内容を吟味することも大切です。信頼できるFPであれば、特定の商品を無理に勧めることなく、中立な立場で本当に必要な保障を一緒に考えてくれるはずです。また一部では「がん保険はいらない」と極端な意見も見られますが、それに惑わされるのも危険です。貯蓄や公的支援でまかなえる人には不要な場合もありますが、多くのケースでは経済的リスクに備える有効な手段となります。自分と家族の状況に照らして、冷静に判断するようにしてください。
怪しい未承認の治療法に惑わされないために
がんと診断されると、「少しでも可能性があるなら」と標準治療以外の代替療法に頼りたくなるお気持ちは理解できます。しかし、効果が証明されていない未承認の治療法や、根拠を誇張した高額な自由診療が存在するのも事実です。例えば、一部の民間クリニックで提供される○○免疫療法や高濃度ビタミンC点滴などは、非常に高額な自由診療であるにもかかわらず有効性が確立されていない場合があります。こうした治療には数百万円単位の費用がかかることもあり、経済的負担は甚大です。実際、未承認薬の中には1か月あたりの薬剤費が1,000万円以上となるケースも報告されています。全額自己負担の自由診療を漫然と続ければ、貯蓄を使い果たしたり借金を抱えたりして、家計が破綻してしまう危険もあります。
私がご相談を受けたご家族の例でも、60代の男性Bさん(仮名)は標準治療で効果が見られなかったため、知人に勧められた未承認の免疫療法に最後の望みを託しました。Bさんのご家族は治療費として数百万円を工面し、その自由診療を受け始めました。しかし残念ながら病状は好転せず、高額な費用だけが家計に重くのしかかる結果となりました。Bさんの奥様は「冷静に考えれば根拠のない治療だとわかっていたのに、藁にもすがる思いだった」と、後に涙ながらに語ってくれました。このように、追い詰められた状況では普段なら信じないような話にもすがってしまう心理につけ込まれる恐れがあります。
さらに悪質な例として、「がんが治る水」などとうたい、ネットワークビジネスを通じて患者さんに高額な健康商品や未公開株への投資話を持ちかける詐欺事件も実際に起きています。こうしたケースでは治療効果がないどころか、大切なお金まで騙し取られてしまいかねません。
では、未承認治療や怪しい勧誘に惑わされないためにはどうすればいいでしょうか。まず第一に、主治医や専門の医師に必ず相談することです。新しい治療法を検討する際は、その効果とリスクについて担当医に率直に尋ねましょう。医学的に妥当な代替療法であれば、医師も何らかの見解を示してくれるはずです。また、信頼できる公的な情報源を活用してください。国立がん研究センターの「がん情報サービス」など、公平で専門的なサイトには各種治療法の解説やエビデンスが掲載されています。ある調査では、がん患者の約45%が何らかの補完代替療法(民間療法やサプリメント等)を利用しており、平均で月5.7万円もの出費をしているという結果もあります。こうした費用がかさめば家計を圧迫しかねません。経済面でも、むやみに高額な治療に飛びつく前に、かかる費用と効果の不確実さを冷静に天秤にかけることが重要です。
どうしても標準治療以外の方法を試したい場合は、費用負担を軽減できる制度がないか調べましょう。例えば日本には患者申出療養制度があり、未承認薬の使用でも一定の条件を満たせば公的保険との併用が認められています。また、民間のがん保険にも先進医療や自由診療をカバーする特約が登場しています(SBI損保など一部の保険では自由診療の実額補償まで用意しています)。もちろん、それらに加入していなければ多額の費用を全て自己負担しなければなりません。大切なのは、決して一人で思いつめないことです。治療法について迷ったときこそ、セカンドオピニオンを含め複数の専門家に相談し、経済面については家族やFPと一緒に支払いの計画を立ててください。焦る気持ちは察しますが、冷静な判断が何よりもあなた自身を守ることにつながります。
不安なときこそ、正しい情報と専門家のサポートを
ここまで、怪しい保険商品や治療法に惑わされないためのポイントを見てきました。では、いざ自分や家族ががんに直面したとき、どのように行動すればいいのでしょうか。最後に、私川原拓人から皆さんへの具体的なアドバイスをまとめます。
主治医・専門医に相談する: ご自身の病状にとって最適な治療について、納得いくまで医療従事者に確認しましょう。ネット上の情報に振り回されず、まずは信頼できる医師の意見を仰ぐことが第一歩です。
公的な情報源を活用する: 国立がん研究センターの「がん情報サービス」や厚生労働省の資料など、公平で専門性の高い情報サイトで正しい知識を得てください。統計データや科学的根拠に基づく情報は判断の大きな助けになります。
公的制度・保険の内容を確認する: 高額療養費制度など医療費負担を軽減する公的制度や、加入している保険の給付内容を早めに確認しましょう。実際、保険診療の範囲内であれば高額療養費制度により自己負担額が月数万円程度に収まるケースも多く、過度に悲観せずに済む場合があります。使える制度や保険金を把握しておけば、無用な不安に駆られにくくなります。
FPなどお金の専門家に相談する: 信頼できるファイナンシャル・プランナーや社会保険労務士などに早めに相談し、治療と仕事、生活費のバランスを一緒に考えてもらいましょう。場合によっては収入保障保険や就業不能保険などの活用も検討します。第三者の視点で家計を見直すことで、冷静な判断と長期的な計画が立てやすくなります。
公的な相談窓口を利用する: 日本対がん協会の「がん相談ホットライン」や各自治体のがん相談支援センターなど、無料で相談できる窓口も活用しましょう。不安な気持ちを専門の相談員に話すだけでも心が軽くなることがあります。
怪しい勧誘はきっぱり断る: 高額な契約や投資話を急かすような勧誘には注意が必要です。「今すぐ契約しないと手遅れになる」といった煽り文句が出たら要警戒。で触れたような悪質商法の手口では、不安を煽って冷静な判断を奪おうとします。少しでも怪しいと感じたら、その場で即決せず一度持ち帰る勇気を持ちましょう。本当に自分のためを思った提案であれば、冷静に検討する時間を与えてくれるはずです。
以上のように、正しい情報を得て適切に備えることで、がんと向き合う上での不安は大きく和らげることができます。一人で抱え込まず、遠慮なく専門家の力を借りてください。
川原拓人からのメッセージ:安心して闘病できる社会を目指して
私は、一人でも多くの患者さんとご家族が、経済的な理由で適切な治療を諦めたり、悪質な情報に惑わされたりしない社会を実現したいと考えています。その想いから、私が代表を務めるi・Partnersでは2025年にがん患者支援の新たな取り組みとして日本対がんファイナンシャル・プランナーズ協会(JCFP)を設立しました。JCFPでは、がんに関する正確な知識と医療費・保険・ライフプランニングを含む経済リスクへの対応力を備えた専門家「Cancer FP(がんFP)」を育成・認定し、社会に送り出すことを使命としています。正確かつ中立な情報を広く提供し、必要に応じて患者さんに信頼できるがん専門医を紹介する仕組みも整えながら、がんと共に生きる時代に皆さんが安心して備えられる環境づくりに取り組んでいます。
ファイナンシャルプランナーの役割は、お金の計画を立てることだけではありません。人生で最も困難な局面の一つである闘病生活において、経済面から支え、判断の伴走者となることも重要な使命です。私、川原拓人は、患者さんとご家族が最善の治療を受けながら生活を維持できるよう、保険の見直しや公的支援の活用、働き方の調整や治療費捻出の計画づくりまで、総合的なサポートを提供しています。情報過多の時代だからこそ、冷静で確かな視点を持って皆さんの味方となる専門家が必要です。
最後にお伝えしたいのは、どうか一人で悩まないでくださいということです。がんと診断されただけでも大きなストレスですが、経済的な不安や情報の混乱まで一人で抱え込む必要はありません。信頼できる専門家や公的機関の力を借りることは、決して甘えではなく賢明な判断です。私やi・Partnersの扉はいつでも開かれています。にあるように、がんと共に生きる時代にすべての人が「備える」ことができる社会を目指し、私も微力ながら皆さんと共に歩んでいきます。安心して闘病に専念できる未来を、一緒に創っていきましょう。
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